大阪都構想については、11月1日(2020年)に住民投票が実施される見通しだ。5年前の2015年5月17日、大阪市を特別区5区に再編する都構想案については、住民投票されたが僅差で否定された。
しかし、その後、都構想推進派の松井一郎・吉村洋文両氏が、大阪府・大阪市長に選任されるなど、府民・市民の間で都構想への希望が多く、今回、大阪市を特別区4区に再編する都構想案について住民投票がなされる。
中央政党の「立ち位置」の変化
国政レベルでは、2012年8月、大都市地域における特別区の設置に関する法律(都構想法)が、当時の共産・社民を除く与野党が共同提出した後、可決した。それに基づき、都構想実現の道が開かれ、その後の住民投票にいたってきた。
大阪都構想は、一言で言えば、大阪市を特別区に再編することだ。東京都では、東京「市」はなく23の特別区なので、東京都民にとっては当たり前だが、大阪府には大阪市があって特別区はない。
筆者のような都民には、大阪府と大阪市の関係はわかりにくい。高校について、東京都では、23区はもちろん、都下に市はあるが、市立高校ではなく都立高校だ。しかし、大阪府では、市立高校と府立高校がある。
地下鉄・バスは、東京都では都営、大阪府では市営。特に地下鉄では、東京都は広域展開し私鉄との相互乗り入れも便利だが、大阪市営地下鉄はそれに比べて見劣りする。大阪メトロになってどこまで変わるだろうか。
もし、大阪が東京に次いで副首都になりたいなら、都民の筆者には大阪都構想は当たり前にみえるが、5年前の住民投票で大阪市民は別の判断をした。
大阪での住民投票が近づくにつれて、徐々に盛り上がっている。都構想を推進する松井大阪市長・吉村大阪府知事コンビへ市民の支持も増えているようだ。
これに対して、中央の政党の立ち位置は微妙だ。反対しているのは、立憲民主と共産だ。共産は、8年前の都構想法から一貫して反対だ。立憲は、「元」民主党で8年前は賛成だったが、今や反対だろう。公明は、5年前には反対だったが、今回は賛成しそうだ。自民は、大阪自民は一部で反対だが、中央はどうか。菅義偉政権になったが、菅首相は5年前の都構想法のとき推進の中心人物だった。
市職員にとって死活問題との見方も
都構想は、大阪市を再編するので、大阪市の職員にとっては死活問題という見方もある。今やネットでいろいろな情報が入手できるが、2020年8月27日の大阪市会施政対策委員会での自民党新田孝市議の質疑があった。これについて、橋下徹氏は
「これが自民党市議会議員の大阪都構想反対理由。『大阪都構想になれば天下りがでけへんようなるで』」
とツイートした。これは市役所職員の本音なのだろうか。
原口一博氏のツイートも面白かった。
「吉村さん、私達は反対のための反対は、しません。理解の為、教えてください。何故、大阪都なのですか?陛下のおられるのは東京ですよ。大阪に遷都するのですか?大阪都構想とは、機構改革で遷都でないのですか?それなら都は使えないのでは?日本の歴史に沿った改革を目指しましょう」
さすがに、「都」の名称を反対理由とするのは、5年前だ。吉村氏から、
「原口さんの指摘は『京』です。東京都も、もともと『都』ではなく、東京市と東京府でした。これが、1943年に一つになり、東京『都』になりました。日本の大都市制度は『都区制度』と『政令市制度』です。大都市法上、『都区制度』とみなされます。但し、名称変更には法が必要です。大阪都を目指します」
と、元総務大臣の原口氏をディスらず、諭すような返答があったのはさすがだ。はたして、住民投票の結果はどうなるか。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「FACTを基に日本を正しく読み解く方法」(扶桑社新書)、「国家の怠慢」(新潮新書、共著)など。