キャッシュレスから「金融サービス」へ誘導?
具体的な取り組みのうち、楽天ポイントカードと楽天ペイを東急の実店舗に導入する施策が気になる。他の2つは東急と楽天の強みを持ち寄るが、ポイントカードとペイは、楽天が一方的に東急に導入している。楽天にTOKYU POINTを導入する施策がない。発表文中では「日本のキャッシュレス化をさらに後押しするため」と説明されているものの、東急もTOKYU CARDというキャッシュレスの手段を持ち合わせているのだ。
ひょっとすると東急のクレジットカードやポイントサービスが、楽天のものにいずれ置き換わる示唆なのかもしれないが、より大きな視点で考えると出てくる答えが金融サービスへの誘導となる。
楽天のグループ企業である楽天銀行や楽天証券といった金融サービスをオフラインでの顧客獲得につなげようとする場合に、東急が持つ店舗が役に立ちそうだというわけだ。
OMOに関連した金融領域の施策では、例えば楽天ペイで支払うお金を貯めたり増やしたりするのに楽天の金融サービスを使ってみてはどうかと提案できるし、東急の店舗で楽天ペイを使って支払った顧客だけのキャンペーンもできる。また東急の店舗に楽天の金融サービスの相談窓口を置くなどの施策もできる。Eコマースでも実店舗でも売上高を増やすためには、顧客が持つお金の絶対量を増やすことも重要となる。
折しも東急は銀行や証券などの金融事業を持ち合わせていないので、楽天との共食いにならない領域。言葉を選ばずに言えば、楽天が「食い物」にできる領域であるといえる。東急の物販の規模は、楽天の10分の1程しかないが、新たな金融サービスへの誘導手段として活用しない手はないだろう。
金融サービスへの誘導はあくまで想像で書いているに過ぎないが、利便性や生活価値の向上には必要不可欠なものといって過言ではない。
いずれにせよ楽天と東急がどのような価値・体験を提供してくれるのか楽しみだ。