自民党の稲田朋美衆院議員が2020年9月23日に開いたオンライン会見で、菅義偉前官房長官が圧勝した自民党総裁選について「この派閥の力学による総裁選というのが非常に不思議な光景だなぁ、と私は思った」などと違和感を口にした上で、所属派閥の意向で総裁選出馬を断念した経緯も明かした。
稲田氏は、候補者の一定数を女性に割り当てる「クオータ制」の導入が持論。総裁選の候補者には閣僚や党役員への女性登用を求めていたが、女性閣僚の登用は2人にとどまり、「あまり響いていなかったんだなぁ、と残念に思う」とも話した。
そもそも「女性が自民党で公認を得るのは困難」
稲田氏は東京・丸ノ内の日本外国特派員協会で会見する予定だったが、高鳥修一衆院議員の新型コロナウイルス感染の影響で、オンライン会見に切り替えられた。
稲田氏は会見冒頭、
「政治は男性の仕事だという認識があり、自民党が強いとされている地域では、特にそれが強い。女性が自民党で公認を得るのは困難だ」
などと、そもそもスタートラインに立つことが困難なことを説明。稲田氏は05年の郵政解散で、郵政民営化法案に反対した議員に対する「刺客」として安倍晋三幹事長代理(当時)から立候補を要請され、初当選したという経緯があり、
「郵政解散がなければ、自民党の候補者にはなっていなかっただろう」
とも話した。
自民党、とりわけ派閥の現状について違和感を口にする場面も多かった。菅氏が当選した総裁選については、
「菅さんはずっと無派閥で、しかも、ずっと派閥を批判されて無派閥でおられた方だが、今回の総裁選を見ると、総裁選になった途端に、急激に派閥の力学が前面に出てきたことを常に強く感じた。それが良いとか悪いとか言うつもりはないが、無派閥の菅さんにおいて、この派閥の力学による総裁選というのが非常に不思議な光景だなぁ、と私は思った」
などと振り返った。
稲田氏は自民党の議員連盟「女性議員飛躍の会」の共同代表を務めており、総裁選の際には、3候補に(1)閣僚や党役員への女性登用(2)次期衆院選の比例単独候補への女性の登用(3)結婚をしても旧姓を使い続けられる法的な制度の創設、などと求める要望書を手渡していた。その結果として発表された人事には失望感を隠さなかった。
「結果、今回の閣僚が2人ということを見ると、あまり響いていなかったんだなぁ、と残念に思う」
派閥の細田会長「今回はうちの派閥からは出さない」
稲田氏は総裁選出馬に意欲を示していたが、断念したという経緯がある。これも、派閥との関係が原因だ。稲田氏は、
「女性も総裁選に手を挙げる、意欲を示すということはすごく重要だという思いで、その意欲はある、ということを今回も申し上げた。それは今までも言ってきたことでもある」
との立場だが、実施は所属する細田派から「待った」がかかった。
「今回、突然の総裁選になる前から、細田会長からは『今回はうちの派閥からは出さない』ということを言われてきた」
さらに、派閥の意向に背いて出馬を強行した場合、公認やポストを失うリスクにも言及した。
「若手の、女性も男性もそうだが、やはり、次の、目前に迫っている選挙の公認の問題であったり、もしかしたらポストということもあるかも知れないが、前面に派閥が出てきているような総裁選において、そこから飛び出して、そして、次の選挙もポストも(得よう)...ということでついていくというのは、非常に私は困難なんだな、ということを実感した」
「この小選挙区制において、公認を得るかどうかは党の幹部が握っている状況において、特に女性は、選挙基盤が強くない人がとても多いし、小選挙区がない人もいる。そういう状況の中で、(推薦人になる)仲間を募っていくということは、とても難しいな、ということも実感した」
将来の女性首相誕生の可能性は、自民党が現状への危機感を持つかにかかっているとみている。
「今、自民党の政治は非常に安定もしているし、どちらかというと自民党一強という中では、そういう危機感というか、日本の民主主義をもっと充実するとか、そういった危機感をまず自民党が持つことから、女性総理の道が開いていくと感じている」
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)