手がかりを握る人物を探すと...
渋谷駅西口から歩いて10分。ヒカリエを通り過ぎたところにある雑居ビルの7階に向かった。
そこに株式会社Sはなく、別の会社Yがテナントを使っていた。会社Yに株式会社Sのことを聞いてみると、事業責任と名乗る男性が対応した。20代後半に見え、髪は茶色と明るい。
「株式会社Sはこの企業の前身です。僕も在籍していました。前の代表(T氏)が飛んでしまって......。今年の4月に会社を一新して、僕が担当をしています」
当時の株式会社Sを知っていると話す男性。田中さんが受け取った偽造の源泉徴収票を見せると、「田中さんなんていなかった」と話す。
株式会社Sの代表Tはどんな人物だったのか。
「穏やかな人ですよ。ただ、お金に困っている噂ですよ。(違法行為は)もしかしたら...。遊びで借金を3000万ほど作っていたとも聞いています。そんなこんなで会社から急にいなくなったので。電話番号は分かりますよ。ただ僕が掛けても電話は繋がりません。向こうが出ません。今住んでいる場所は分かります。ウチに家賃の督促状が届いたので」
家賃督促状に書かれた住所は、西新宿にある高級マンションの25階。外観は全てガラス張りで、都内では名の知れている物件だ。はがきには家賃は37万5千円と記載されている。
何度か電話にかけても出る気配は全くない。すぐに自宅を訪ねることにした。
マンションのロビーには、コンシェルジュが2人。24時間体制でタクシーの手配や、宅配便の受け渡しをしているという。指定の用紙に身分の詳細を記載しコンシェルジュに渡すことで、呼び鈴を鳴らしてもらえる。
18時半にインターホンを鳴らしてもらうと女性が出る。「Tさんはいません。19時以降に来てください」と回答。19時以降に鳴らしたものの、出ない。19時半、20時になってもインターホンは繋がらないまま。次の日もその次の日も訪れたものの、インターホンのスピーカーから人が出ることはなかった。
代表Tと「資金調達グループ」の関係は。「源泉徴収票や時計詐欺」に関する質問状をマンションに投函している。回答が戻って来次第、詳報したい。
(ジャーナリスト 板垣聡旨)