「警察には相談できません。捕まる恐れが...」
数日後、相手側から振り込んだと連絡が来た。けれども、一向に口座には反映されない。それから1週間が経ったものの振り込まれるどころか、今は電話すら繋がらないという。
記者が電話をしてみると、「この電話番号は電源が入っていないか、電波の届かない場所にいるため、掛かりません――」と受話器から聞こえた。
警察へは行かないのか。
「警察には相談できません。捕まる恐れがあるから。偽造の源泉徴収票を作ってもらい、消費者金融からお金を借りました。19万円ほどかな」
田中さんの話はこうだ。時計の換金を勧めてきた「資金調達グループ」に1万5千円を払い、偽造の源泉徴収票を作成してもらったという。大手消費者金融では、借入の審査がある。無職の場合、審査に通ることは難しくなるので、田中さんがその企業で働いているように見せ、審査を通過させることを目的とするものだ。
実際にその源泉徴収票を見せてもらった。田中さんの受け取る給料は年収510万円と記載。支払者は、東京都渋谷区にオフィスを構えるベンチャー企業S。サイトを見ると、代表は30代前半の男性T。ツーブロックを入れており、ベリーショートの黒髪をしている写真が掲載されている。
電話が一切繋がらない「資金調達グループ」。何か手がかりを入手できないか。実際にオフィスへ向かった。