「コロナ渦で仕事が見つからなくて、SNSで詐欺に合い、180万の負債を負いました......」と悩みを吐露する人がいた。SNS上で「緊急でお金が欲しい方!即日即金&着金!」と書かれているアカウントに応募したのがきっかけだと話す。結果、190万円の借金を追うことになった。一体、なにが起きたのか。SNS「資金調達」の実態を取材した。
コロナで仕事が...お金が尽きて「資金調達」に応募
5月下旬、SNSで詐欺にあったという男性と出会った。田中たくやさん(仮名)。20代半ば。
「つい最近のこと。コロナ渦で仕事が見つからなくて、SNSで資金調達を謳っているアカウントに連絡をしました。そしたら180万の負債を負いました...」
田中さんになにが起きたのか。
「2020年3月まで、テニスクラブでコーチをしていました。実家の農家を継ぐため退社。ところが、コロナにより農家は畳むことに。求職活動をしたものの、仕事が見つからなかった」
親は高齢になり、相談はできない。そこで、写真共有アプリのInstagram(インスタグラム)で偶然見つけた「資金調達」と名乗るアカウントに、連絡をした。
連絡をして6時間後、「良ければ詳しくお話ししたいのでラインからご連絡お待ちしています」と返答が来た。田中さんから通信アプリ・LINE(ライン)の会話を見せてもらう。そこにはこう書いてあった。
「弊社ではカード融資案件と時計案件をやっております。年齢、職業、cic(個人借入信用情報)によりますが属性がいい方ですと500万~1000万程つくれます。若い方ですと100~800万つくっている実績があります。手数料は資金調達できた全体の額から25%になりますが、全て成功報酬ですので、資金を作れなかった場合は一切いただきません(原文ママ)」
そのあと、田中さんはLINEを使った電話で、「牧野」と名乗る女性と1時間ほど話す。資金調達の仕組みの説明だった。
求職中の田中さんは、時計ローンがいいと提案を受けた。内容は、高額な時計を買い、それを転売することでお金をもらうものだった。転売は「資金調達グループ」の一味だと名乗る人が行うという。
その後、会社代表の「松本つばさ」と名乗る人物と約60分電話をすることに。会社としての簡単な審査が行われた。審査には無事通過したという。田中さん側の受け取る金額を減らせば、「即日着金も対応する」と言われたという。
2日後、関内駅の近くにあるカフェで、「かずき」と名乗る30代男性と合流した。午前中のこと。30分ほど、どの時計を買うかの流れの説明を受けた。そのあと、徒歩10分くらい先にある店舗へ共に向かった。
店内に入ったのは田中さんのみ。「かずき」は外で待機していたという。
事前の打ち合わせで「かずき」が指定した時計は、約240万円するもの。無職の田中さんは審査が通る可能性は低い。打開策として、田中さんは「かずき」から60万円を受け取ったという。前金として払うためのお金だ。
前金の60万円を引いた約180万円分を、田中さんは60回ローンで契約。「資金調達グループ」から、90万円を受け取る約束をしたという。時計は、購入後に店の外で「かずき」に渡した。
100万円近い金額が中抜きされている。自分へのメリットは少ないため、断らなかったのか。当時の様子を、どうしてもお金が欲しかったと田中さんは話す。
「とにかくとにかくお金が欲しく、金額の差が大きいことは頭になかった。家の電気ももうそろそろ止まる。すぐにお金が欲しかったんです」