ごった煮からの「ひとり立ち」 DANROにみる「会費運営メディア」のあり方【ネットメディア時評】

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   朝日新聞社が運営するウェブメディア「DANRO(ダンロ)」が、2020年10月に事業譲渡されると発表された。

   新たな運営主体は、DANRO創刊編集長が代表を務める企業。マスコミが生み出したメディアが、わずか数年で個人経営へと引き継がれる、あまり例のないケースの事業継承だ。

  • 「DANRO」Tシャツ(ウェブメディアびっくりセールで購入)を着用する筆者
    「DANRO」Tシャツ(ウェブメディアびっくりセールで購入)を着用する筆者
  • 「DANRO」Tシャツ(ウェブメディアびっくりセールで購入)を着用する筆者

「広告モデルからの転換」を掲げる

   DANROは2018年5月、朝日新聞社の「ポトフ」プロジェクトの一環として誕生した。ポトフは「バーティカルメディア」をテーマに、複数サイトを展開。そのうち「ひとりを楽しむ」をコンセプトに掲げ、J-CASTやニコニコニュース、弁護士ドットコムなどで編集を手掛けてきた亀松太郎氏を初代編集長に迎えたのがDANROだ。

   しかし創刊1年ちょっとで編集長が交代し、20年3月には更新停止。1300本以上の記事(2月末時点)も、9月末で閲覧できなくなる予定だった。そして消滅まで残り半月に近づいた9月17日、亀松氏が代表を務めるコルトネット(東京都杉並区)への譲渡が発表された。

   亀松氏は、ブログサービス「note」で、新生DANROの構想を明かしている。その核にあるのは「広告モデルからの転換」。PV(ページビュー)に応じて増減する広告収益ではなく、「DANROサポーターズクラブ」と名付けた有料会員からの収入で、メディア運営を続けていくという。noteの「サークル機能」を利用して、会費は980円(以下、月額)からスタート。会員とのやり取りの中で、適正価格を考えていくとしている。

ファンクラブと「ライター育成」の側面も

   DANROサポーターズクラブのように、読者からの直接課金で収益安定化をはかる動きは、少しずつ広がっている。デイリーポータルZ(イッツ・コミュニケーションズ、02年創刊)は、会員制度「友の会」を経て、18年9月から「はげます会」(1000円)を運営している。編集部・ライターによるメールマガジンに加え、はげましひろば(Facebookページ)では読者参加企画も呼びかけ。双方向のコミュニケーションをとっている。

   オモコロ(バーグハンバーグバーグ、05年創刊)が19年7月に始めた「ほかほかおにぎりクラブ」は、オンラインコミュニティ(Discord)での交流は「はげます会」と同様だが、ログインボーナスとしてライターを絵柄にしたカードを付与するなど、よりファンクラブの趣が強い。「スタンダードおにぎり」(980円)に加え、「プロフェッショナルおにぎり」(2980円)では、記事・漫画の添削アドバイスや、企画案の相談に乗ってもらえる特典(いずれも月1回)が付けられ、ファンのみならずライター志望者にもメリットがある。

   DPZもオモコロも10年以上の歴史を持ち、すでに知名度が高い。所属ライターの「キャラ立ち」もされていて、確固たるファンがいる。プラットフォームとしてのnoteを見ても、文藝春秋digital(900円)、TV Bros.(500円)といった雑誌のデジタル版があり、「記事への対価」としてのサブスクリプションには競合が多い。大鍋に入れられた「ポトフ」から、文字通り「ひとり」になったDANRO。煮詰まらないように、焦げ付かないように、いかに味を深めていくがポイントになるだろう。

(J-CASTニュース副編集長 城戸譲)

【J-CASTネットメディア時評】
いまインターネットでは、なにが起きているのか。直近の出来事や、話題になった記事を、ネットメディアの「中の人」が論評します。

城戸譲 J-CASTニュース副編集長
1988年、東京生まれ。大学でジャーナリズムを学び、2013年ジェイ・キャスト新卒入社。Jタウンネット編集長などを経て、18年10月より現職。「ニュースをもっと身近に」をモットーに、政治経済からエンタメ、生活情報、炎上ネタまで、真面目とオモシロの両面で日々アンテナを張っている。ラジオとインターネットが大好き。(Twitter:@zurukid

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