岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち
9.11 あの時の「沈黙」と重なるニューヨークの今

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「テロは内部犯行」と訴えるリバタリアン

   ステファニー(29)は、4歳と1歳半の子供を連れてきていた。たった1人の兄(当時20歳)を失った。大学を卒業し、世界貿易センタービル内の銀行でインターンをしていた。 

   10歳だった女性はあの朝、現場から程近い学校の窓から、煙が立ち込めているのを不思議な思いで見たという。何が起きたのかは、わからなかった。その後、母親が慌てて学校に迎えに来た。

「その日はまだ希望を持てた。兄は帰ってくる、と信じていた。でも、2日、3日と過ぎていって、だんだん希望が薄れていった。ついに2週間後、遺骨も遺品もないまま、弔ったの」

   そう言いながら、女性は泣き出した。

   「いろいろ尋ねてくれて、ありがとう(Thank you for asking.)」と女性は私に言った。

   遺族に声をかけるのは、いつもためらわれる。でもほとんどの人がステファニーのように、「話すたびに少しずつ心が軽くなっていく」などと逆にお礼を言ってくれる。

   私と話す遺族の声が、すぐそばで大声で呼びかける男性の声に、たびたび、かき消された。同時多発テロは「内部の者による犯行」だと訴えている。

「救助のために現場にいた消防士たちは、真実を知っている。十分な証拠もある。年金や家族や自分の命を守るために、沈黙していたけれど、ついに立ち上がったのです」

   この男性は活動家で、建築業に携わっているという。

「だから、建物のことはよくわかっている。飛行機の激突で、あのような崩れ方はしない。トランプは、ビルを崩壊させたのは誰なのか、調査すると言いながら未だにはっきり示していない。民主党、共和党、どちらも汚い。二大政党制は、完全に腐敗している。バイデンにもトランプにも投票するつもりはない。僕はリバタリアン(自由至上主義者)だ」
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