菅内閣で、公明党の赤羽一嘉・国土交通相が再任された。国交相のポストは2004年以降、民主党政権時代を除いて、ずっと公明党議員が独占している。どうしてなのか。
2001年の中央省庁再編で発足した国土交通省のトップ・国交相に公明党の衆院議員が就くようになったのは04年9月の北側一雄氏から(06年9月まで)。以来、故・冬柴鐵三氏(06年9月~08年8月)、太田昭宏氏(12年12月~15年10月)、石井啓一氏(15年10月~19年9月)と続いている。19年9月から務める赤羽氏の1年間と合わせて、11年以上に及ぶ。
2004年からの16年のうち11年以上は公明ポスト
赤羽氏の就任前、公明党の山口那津男代表は安倍晋三・前首相との党首会談で、「これまで通り」と閣僚枠1人と国交相の継続を求めた。公明党議員1人が国交相を2~4年間務めるのが通例になっており、菅政権になってもあと1~3年は続けるとみられる。
なぜ公明党は国交相のポストをほしがるのか。全国紙で公明党担当を経験したこともある政治部デスクがいきさつを解説する。
「国交省が所管する建設業界と自民党は歴代、公共事業を通じて『ずぶずぶ』の関係でした。自分の選挙区に道路や土木工事を持ってくるために、旧建設省を通じて予算を優先的に確保する。そして工事に参入する建設会社に選挙での応援や献金を求める――そんな『癒着』がまかり通っていました」
「それが、2001年に『自民党をぶっ壊す』と唱えて誕生した小泉純一郎政権の時に『メス』が入りました。自民党の中でも特に『道路族』を牛耳っていたのは旧橋本派(現竹下派)ですが、自民党総裁選で故・橋本龍太郎元首相と争って勝ち、首相に就任した小泉氏は、道路特定財源の見直しなどに着手したのです」
建設業界400万人の動員力が「うまみ」か
旧建設省系の50代の国交省幹部は「(国交省の)予算が減っても、政治家にとっての『うまみ』は減っていない」と話す。
「道路や土木の工事だけでなく、ダムや港湾、不動産や航空など、国交省が所管する業界は幅広く、地方の知事や首長からの陳情は引きも切らない状態です。地元の陳情を受ける政治家から(国交省への)口利きもありますが、彼らは『大臣につないだ』と言えば地元にメンツが立つのです。仮に地元の希望通りの結果にならなくても、『公明党の大臣だからね』と言えば、言い訳が立つのです」
公明党にとっても「うまみ」はあるという。先出の政治部デスクが言う。
「建設業界は就業者が全国に400万人います。今でも選挙の時は、業界一丸となって票とカネを動かす動員力があります。実際、過去の衆院選で公明党が苦戦していたある比例ブロックで、業界に『選挙区では自民に、比例区では公明に』と投票を呼びかけたところ、劣勢を挽回して当選に導いたこともありました。公明党の存在感をアピールするのに、国交相というポストはうってつけなのです」