外岡秀俊の「コロナ 21世紀の問い」(22)新型コロナの実態 これまでに分かったこと

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   中国が武漢を都市封鎖した2020年1月23日から、間もなく8か月。世界の感染者は3000万人を超え、死者も92万人超になった。各国のワクチン開発競争は日ごとに激しさを増している。ウイルスの実態はどこまで解明され、防止対策で検証すべき点は何か。8月30日に「新型コロナ制圧への道」(朝日新書)を出版した科学ジャーナリスト大岩ゆりさんの話をもとに、「中間総括」を試みたい。

  •                              (マンガ:山井教雄)
                                 (マンガ:山井教雄)
  •                              (マンガ:山井教雄)

激化する世界的ワクチン開発競争

   米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は9月12日付(電子版)の「中国がコロナワクチン候補を数十万人に投与」という記事で、ワクチン開発の詳細を報じた。

   それによると、中国医薬集団(シノファーム)傘下の中国生物技術(CNBG)はその週、7月に政府が承認した緊急使用条件の下で、2種類のワクチン候補を数十万人に投与したことを明らかにした。またこれとは別に、中国のワクチンメーカー、科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)は最高経営責任者(CEO)を含む従業員とその家族約3千人がコロナワクチン候補を接種したと明らかにした。

   この3つのワクチン候補は、安全性と有効性を検証するために、数千人での第3相臨床試験(治験)を実施中だ。世界保健機関(WHO)によると、他の6つの有力ワクチン候補も最終段階にあるという。

   同紙によれば、CNBG幹部のチョウ・ソン氏は、同社のソーシャルメディアのアカウントで、ワクチンを接種した人で、新型コロナウイルスに感染した人や明らかな副作用があった人は1人もおらず、妊娠中や授乳中の女性はワクチンを接種していないと述べた。

   シノバックのスポークスマンは、同社が最近実施した予防接種は純粋に自発的なものであり、臨床試験終了前にワクチンを接種することによる潜在的なリスクは投与者に開示されていると述べた。また、同社が従業員にこの申し出をしたのは、従業員がより高い感染リスクにさらされていると考えたからだと語ったという。

   同紙はこの記事の前文で、「厳格な治験完了前のワクチン大規模接種については、欧米の製薬会社の間では懸念する声も出ている」とクギを刺しているが、それも当然だろう。

   コロナワクチンについてはこの記事の4日前の9月8日、英製薬会社アストラゼネカが最終段階の治験の一時中断を発表した。

   同社はオックスフォード大と研究開発を進めてきたが、「安全性データの検証のため、ワクチン接種を自主的に停止した。原因不明の疾患が起きている可能性がある」として、6日にすべての治験を停止した。結局、独立委員会が調査に当たって英当局が認め、同社は12日に治験の再開を発表した、ただし、ニューヨーク・タイムズは同社が中止を決めたのは英国での治験の参加者が横断性脊髄炎と診断されたためと報じたが、同社はそれについてはコメントしなかった。

   今回の治験中断が発表される直前、同社を含む欧米の製薬・バイオ企業9社は「団結して科学を支持する」という異例の共同声明を発表した。

   米モデルナ、米ファイザーなどの連名による声明は、米食品医薬品局(FDA)など専門規制当局のガイダンスに基づいて「安全性と効果が証明される必要がある」と述べ、「安全性と接種者の健康を常に最優先にする」、「臨床試験や製造過程では高い科学的・倫理的水準に従う」などと宣言している。またこの宣言で「厳格な科学的、規制的プロセスに対する信頼を確保できると信じている」としている。

   これは、政治的思惑で承認プロセスがゆがめられるのではとの懸念に答え、いずれ市場に出回るワクチンが安全で効果的なものであることをアピールする狙いがあるだろう。

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