安易な「誹謗中傷」訴訟、反訴→賠償のケースも 弁護士が「リスク」にあえて警鐘鳴らした理由

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問題提起の根底に「思想の自由市場論」

   満村氏はJ-CASTニュースの取材に、ブログを公開した背景には、表現の自由が損なわれつつあるとの懸念があったと話す。

「実際に権利を侵害された方が法的措置をとるということは当然の権利であり、私もそれを支持している立場です。プロレスラーの木村花さんの事件もあり、過去には発信者情報開示請求の解説など、むしろ被害者の権利救済に資するようなブログ記事を書いたりしています」

と前置きしたうえで、

「ただ、有名な方があの事件を契機に『バンバン訴訟する』というような発言をしているのを耳にしました。それを受けてネット上で発信をされている人たちが、他人への発言は何らかの法的リスクを負うと認識したのは既成事実だと思います。そのため、表現の萎縮が徐々に生じているんじゃないかと感じています」

と心配する。

   もちろん、誹謗中傷に対する訴訟が増えることで、人格攻撃などを思いとどまらせる「抑止効果」が生まれるメリットがある。一方で、建設的な議論がしづらくなるなどの「委縮効果」にも目を向けるべきとの主張だ。

「表現の萎縮が生まれるとどんな問題があるか、かなり本質的なところでは『思想の自由市場論』というのがあります。これは、なぜ表現の自由が基本的人権として憲法に定められなければならないかという正当化根拠として古くから議論されてきました。誤解を恐れず簡潔にいうと、自由な表現の競争の中でおのずとより良い知恵、知識、考え方が生まれていき、社会をより良い方へ、あるべき方向へ導くという理論です。だからこそ表現の自由というのは、国家やそれに匹敵するような権力から攻撃、介入、ゆがめられるようなことはあってはならないというところに結び付くわけです」
「ある種間違った質の低い情報や時代遅れの言説、たとえば女性は家庭に入るべきだとか、上司に注がれた酒は無理やりにでも飲めとか、特定の層への誤った思想に基づく発言などがネットで飛びかうと、それに対するまっとうな批判がなければ思想の自由市場論からすると社会が間違った方向に行ってしまう。正しいあるべき知識、知恵、考えというものが社会から逆に排除されていく側面があると思います。表現を戦わせる、あるべき批判もネット社会に存在するというのが健全な言論社会、ひいては社会全体の考え方や価値観をあるべきところに導いていくのではないでしょうか」
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