複数内定承諾は「悪いこと。企業に迷惑かかる」の意見も
コロナ禍で、20年は実際に内定取り消しが多く起きている。厚生労働省が全国のハローワークを通じて行った調査によると、20年4月から就職する予定だった大学生や高校生ら174人が企業から内定を取り消された。35人だった前年度の約5倍にあたる。過去10年間でみると東日本大震災の影響を受けた2011年春卒業の598人に次いで多い。
それだけに複数社の内定を承諾せざるを得ない心理となるようだが、一方でこうした行為を後ろめたく感じている学生もいる。
3社から内定をもらった早稲田大学の男性学生は6月上旬の段階で1社に絞った。「同じ就活生や企業に申し訳ないと思った」のが理由だという。先出の国立大学生も「僕は(複数内定承諾が)悪いことと思いながらやっています。企業の方には迷惑がかかりますから」と語った。
20年4~5月は緊急事態宣言によって外出自粛が要請され、「リアル」な面接ではなく、ウェブ面接などで就活が進められた。複数社から内定を得た学生は、オンラインでの人とのつながりも、志望先を絞り込むのに参考にしたと話す。
「同じ内定者とオンライン飲み会をしたのですが、それで同期の雰囲気がわかって、『この人たちと働いてみたいな』と思ったことが(就職先を決めた理由の1つに)あります」(3社からの内定を得て8月に商社に絞り込んだ男性大学生)
「オンラインの面接で、若手社員とフレンドリーに話す機会も多く、それが後押しになって絞り込むことができました」(先出の早大の男子学生)
逆にオフラインでの面接で、知りたい情報を聞き出せなかったという人も。
「(内定を得た)会社の女性の先輩が、自分のライフプランをどう考えているのか知りたかったです。『逆質問』の時間もありましたが、勇気がなくて聞けませんでした。私は海外駐在に強い興味を持っていますが、女性で海外駐在だとライフプランにも大きく関わってきますので...」(先出の私立大の女子学生)