「コロナという名目で上手い具合に書類を作ります」 支援制度「悪用」する「自称税理士」の手口

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自称税理士との電話「コロナ関係なくても大丈夫ですよ」

   電話の時間は10分ほど。050で始まる電話番号から着信があった。税理士の「加藤」を名乗る人物から挨拶、そして概要の説明が始まった。

「今回使用する国の制度は、総合支援資金と緊急小口資金の2種類です。これら(総合支援資金と緊急小口資金)って原則、コロナの影響で働かれてる方での失業や休業したりした方に限定となっていて。でも。それに関係なくても、コロナの影響ということで、申請出せばまったく問題ないので。こちらで書類を作りますわ」

   総合支援資金と緊急小口資金は、市町村の社会福祉協議会が申請や給付の窓口となる。総合支援資金は生活の困難者が対象。月額で20万円(単身者は15万円)の貸付を3か月間受けることができる。更に3か月間の延長も可能。緊急小口資金は、一時的な減収を対象とし、20万円の貸し付けを受けることができる。これらは無利子で保証人は不要だ。担当の省は、厚労省となる。

   申し込みには、本人確認書類や収入が減収し資金の貸し付けを必要とする申立書が必要となる。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、現在は書類を郵送で提出し、審査を受ける。自治体によっては、面接が求められることもあるという。

   費用について、自称・加藤税理士が話す。

「これ、融資条件がいいんですよ。まず利息が一銭もかからない。費用の方は、成功報酬ではなく、一律で頂いていまして。税込で11万円。この11万円ということが先払いで全部というのは難しいと思いますので、一部だけ着手金といった形でご入金いただいておりますね。3万3千円。これを最初に 着手金としていただいて、残りの7万7千円についてはその後ですね。20万円の着金をした後にもらいます」
「申込書ですね。申し込み関係を全部こちらで作って申請までしてしまうので、板垣さんの方では住民票だけ用意してください。住所を教えるんで、そこに送付を。コロナという名目で上手い具合に書類を作ります。コロナの影響で失業したというのをわざわざ電話で会社に確認したりとかはしていないので。そこら辺もちょっとうまく申請すれば通る可能性があるのかなと。これまで500名が融資通ってますよ」

   単身者の場合、総合支援資金(45万円)と緊急小口資金(20万円)を借りることができれば、合計で65万円の融資を受けられることになる。これまで500人に融資のあっせんをしているのが本当であれば、3億円を超える不正審査が通っていることになる。

   「少し考えたい」と伝え、その日の電話は終了。後日、実際に融資を通ったと思われる人が感謝の意を伝えているスクリーンショットが送られてきた。そこには、「今日無事振り込まれました!ありがとうございました!自治体からの電話はなかったです!」と記載されていた。

「加藤」が送ってきたスクリーンショット
「加藤」が送ってきたスクリーンショット

   後日、自称・加藤税理士に記者という身分を明かして電話をした。

「私は、ただお手伝いをしているだけで。知り合いの方がしている手伝いからスタートしている。申請のやり方がわかんないという人のサポートをしている感じですね」

   そこで電話が切れ、繋がることはなかった。住民票の送付先である東京都港区のマンションへ向かったものの、レンタルオフィス。日本税理士会連合会の税理士検索で加藤氏と事務所の名前を検索すると「該当するデータはありませんでした」と表示された。

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