「#出版物の総額表示義務化に反対します」
作家・編集者から危惧相次ぐ理由

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   新聞業界、出版業界、広告業界などの情報を伝える文化通信社が2020年9月14日、出版物に総額表示の義務が課されることがほぼ確定したと報じた。これを受けて、SNS上の作家や編集者たちは出版業界が立ち行かなくなると警鐘を鳴らしている。

   J-CASTニュースが16日、財務省に電話で取材したところ、財務省の担当者は税率を2回引き上げることを前提に総額表示義務を免除していたと述べる。免除期間は、消費税率が10%に引き上げられた2019年10月1日から、2021年3月31日までの1年半としており、すでに税率の引き上げは終了したとして今後は予定通り総額表示を行ってほしいと説明した。

  • 出版物には総額表示(税込価格)が義務付けられている
    出版物には総額表示(税込価格)が義務付けられている
  • 出版物には総額表示(税込価格)が義務付けられている

出版物の総額表示義務の免除を来年3月に終了する見込み

   法令上、原則的として出版物には総額表示(税込価格)が義務付けられている。しかし2014年4月1日に消費税を5%から8%に引き上げ、翌2015年10月には10%に引き上げる予定だった。財務省はこの2回にわたる税率変化を考慮し、引き上げ後一年半は総額表示義務を免除するとしていた。実際には予定より遅れて2019年10月に消費税を10%に引き上げ、総額表示義務の免除は2021年3月31日まで行われることとなった。

   報道が注目を集めると、ツイッター上では「#出版物の総額表示義務化に反対します」というハッシュタグとともに総額表示の義務化に反対する動きが広まっている。

   声をあげたのは主に、作家や編集者。

「これを通されたら小さい出版社はのきなみ潰れ、ちょっとマニアックな本はぜんぶ消滅します」
「表現規制とかじゃなしに、まさかこんな形で梯子を外して出版業界を殺しにくるとは予想してなかった」

   どうして、総額表示義務に対して、出版界から危惧の声が相次いだのか。

流通期間長く...「刷り直し」のダメージ大きい

   日本書籍出版協会などは、財務大臣に対し2003年にも「消費税の価格表示に関する要望書」を提出した。これによれば、出版社は多品種の既刊書在庫(この時点で約60万点)を長期間保有しているという。新刊書だけでなく何年も前に発行した既刊書の需要も高く、また他の商品に比べて代替性が乏しいためである。

   つまり出版業界は、ニーズに応えるために古い商品、消費税変更前の価格を印字された商品も多数抱えているということになる。総額表示が義務化されたならば、これらをすべて修正しなければならず、多額のコストがかかってしまう。

   2003年の要望書によれば、特に1989年の消費税導入時には、経費などとの兼合いから、廃棄または絶版にせざるを得なかった専門書や小部数出版物が多数にのぼるという。

「消費税導入時には、『小売段階での再販価格は、消費者が支払う消費税込みの価格である』(公取委、1989.2.22)とされ、店頭商品も含めて総額表示に一律に変更せざるを得ませんでした。そのため、出版業界は、他の業種とは比較にならぬ多大な経費を要しました。出版社においては、1社平均 3,623 万円(日本書籍出版協会調べ。全産業では 5 万円以下 55.9%、1,000 万円超 0.8%、大蔵省調べ)となり、経費等との兼合いから廃棄または絶版にせざるを得なかった専門書や小部数出版物が多数に上るという由々しき事態が起き、問題となりました」

   さらには、取次会社や全国の小売書店においても、システムの変更、商品の入れ替えに伴う返品・再出荷の運賃負担などが生じたとしている。

   この要望書では、将来にわたり価格表示の変更の度に多大な負担を迫られること、その結果多くの出版物が流通できなくなる可能性があり、読者の不利益、著作者の出版意欲への影響、また学術・文化の振興・普及上の損失は免れないとして、書籍等の出版物は、消費税の総額表示義務付け規定の対象外とするよう要望している。

山田議員「カバーの再印刷などは必要ない」

   各出版社らは現在、消費者が税込価格であると誤認しないための防止策が求められており、本体価格と消費税の併記や、税込み価格を記載する場合には税率も記載するなどの対応策をとっている。書籍自体でなく、挟まれたスリップの「ボウズ」(上部の丸い突出部分)への総額表示を行うことでコストを抑えるなどの取り組みも行われている。

   J-CASTニュースの取材に対しても財務省の担当者は、免除終了後の対応策として、スリップ(書籍の間に挟んである紙)やしおりで総額表示を行うことは、今後も有効だという見方を示した。

   自民党の山田太郎参院議員はこのことを踏まえ、ツイッター上でこう呼びかけた。

「出版物の消費税総額表示の件、財務省に確認。スリップ(書籍の間に挟んである紙)や『しおり』で総額表示していれば、カバーの再印刷などは必要ないとのこと。業界団体にも確認しましたが、現場での作業はあるが大きな影響はないだろうとのこと」

とはいえ菅義偉新首相がテレビ番組で消費税増税に言及したことからも、SNS上では不安視する声が相次ぐ。

「菅さんが今後増税もありうるってウッカリ言ってたのに、もしそれが10年先の話だったりしても、総額表示にしたらそのときに本はどうするの?」
「スリップやしおりを作り直すのも企業によってはしんどい」
「費用を負担できない出版社は返品の段階で倒産するよ」
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