2020年9月16日発足の菅新内閣で、平井卓也前IT担当相が「デジタル担当相」として入閣することが決まった。
自民党のIT分野を長年担当してきただけに実績は申し分なさそうだが、SNS上では、過去に物議を醸したこともある言動も含め平井氏の人物像にあらためて注目が集まっている。
「ワニ」「ニコニコ生放送」「条例」
平井氏は香川県出身の62歳。自民党岸田派に所属する。
父は元労働相で西日本放送と四国新聞社の会長も歴任した故・卓志氏、母は四国新聞社社主の温子氏、弟は四国新聞社代表取締役CEOの龍司氏。
上智大学外国語学部英語科を卒業後、1980年に電通に新卒入社。87年に29歳の若さで西日本放送の代表取締役社長に就任し、2000年衆院選香川一区で初当選した。以来、当選回数7回。
自民党のデジタル施策を支えるIT戦略特命委員長、ネットメディア局長、デジタル社会推進特別委員長、IT担当相などを歴任。13年に安倍晋三首相(当時)をモチーフにしたスマートフォン用ゲーム「あべぴょん」を制作するなど、「IT後進国」脱却に向けて精力的に活動してきた。
そのほか、科学的な裏付けがないとされる有用微生物群(EM菌)の推進を目指す「有用微生物利活用議員連盟」の幹事長や、クールジャパン戦略担当相、ネット上の誹謗中傷対策に関するプロジェクトチームのメンバーも務めた。
「デジタル担当相」への抜擢は、党内派閥にも配慮したとみられるが、党のデジタル分野をけん引してきただけに適任といえそうだ。一方でネット上では、過去に批判を集めた平井氏の言動をあらためて指摘し、懸念を示す声も出ている。
SNS分析ツール「ソーシャルインサイト」で、デジタル担当相への内定が報じられた15日~16日に、「平井卓也」とともにツイッターに投稿された文言を調べると、ネガティブな文脈で「ニコニコ生放送」「書き込む」「香川県」「条例」「ワニ」が頻繁に書き込まれた。
書き込みの中身
「ニコニコ生放送」「書き込む」は、13年に動画サイト「ニコニコ動画」で生配信された党首討論での一幕を指す。社民党の福島瑞穂党首の発言に対し、平井氏が「黙れ、ばばあ!」などと罵倒する書き込みを匿名で行っていたと東京新聞が報じ、批判を集めた。一方、安倍晋三氏には「あべぴょん、がんばれ」と激励の書き込みをしていたという。
「香川県」「条例」は、20年4月に香川県で施行された「ゲーム依存症対策条例」の全国への適用を懸念する声だ。18歳未満のゲームの利用を原則1日1時間とする努力義務を課し、猛反発を浴びながらも成立した。平井氏の家族が経営する四国新聞社のキャンペーン報道「健康は子ども時代から~血液異常・ゲーム依存症対策への取り組み~」をきっかけに、条例制定の機運が高まったとの受け止めが強いようで、
「あの香川県のゲーム規制条例を推進していた四国新聞の経営者一族ですよね...。まさか全国でやったりはしないですよね?」(ツイッターより)
といった声が出ている。
「ワニ」は、平井氏による国会での「ワニ動画」閲覧のことを示す。検察庁法改正案をめぐる2020年5月13日の衆院内閣委員会で、審議の際中にもかかわらず、自身のタブレット端末で「ワニ動画」を鑑賞していたことが発覚し、猛バッシングを浴びた。
なお、動画は「Oyster Bay Golf Links - Alligator」というタイトルでユーチューブにアップされている。米ノースカロライナ州のゴルフ場に現れた巨大なワニが大きな石のようなものを口にくわえ、のそのそと歩いている姿のみが映されている。
もっとも、平井氏の手腕に期待する声も少なくない。
IT大手ヤフーの川邊健太郎社長は、菅義偉新総裁が打ち出した「デジタル庁」創設をにらみ、「デジタル庁創設を担うであろうデジタル化担当大臣は平井卓也さんが就任との報道。Y!みんなの政治を06年にリリースした時に自民党の担当が平井さんでした。以後十数年ずっとIT分野の政策を自民党内で担われている方なので最良の人事かと。ぜひ平井さんをしてエンジニア出身の長官を見出してほしいです!」とツイッターでエールを送った。