ネタバレ・スクショの功罪 識者に聞く「キン肉マン」声明の見解

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不明瞭な「ネタバレ」の定義

   「キン肉マン」の措置は、ほかの漫画にも波及するのではないかと、読者から高い注目を集めている。そんな中、「少年ジャンプ+」編集長の細野修平さんは9月10日、ツイッター上で、「週プレNEWS」と同じスタンスだとコメントした。「ジャンプ+」では、「週プレNEWS」から2週遅れで「キン肉マン」を掲載している。翌11日には下記のツイートを加えている。

「2週間ネタバレ駄目ということではないです。『キン肉マン』に関して酷いネタバレをやめてねというのが、ゆでたまご先生と同じ気持ちということでした」
「酷いネタバレ」とはどういったものを指すのか、具体的な説明はない。
「これは集英社全体の方針がそうなんですか?」
「『ネタバレ』の基準は人それぞれなんですから曖昧なままの方針で訴訟とか振りかざさないでよ頼むから」
「マジで『ネタバレ』の定義をきちんと決めてくれよ」

   読者たちの間には、感想をつぶやくことへの不安が残っている。さらに今後、この方針が「ジャンプ+」連載作品を始めとする他のマンガにも適用されていくのか、注目が集まっている。

   このように、マンガの感想をつぶやくことに大きな影響を与えた「週プレNEWS」編集部の声明に対し、小林弁護士は苦言を呈する。

「ゆでたまごの嶋田先生や『キン肉マン』編集部が紙媒体で作品に触れる読者を思う気持ちも理解できるのですが、文章によるネタバレに対してまで法的措置を仄めかすのはやや踏み込んだ表現であるという印象を受けました。これまで(私も含め)大勢のファンが毎週月曜日0時のキン肉マンの更新を心待ちにし、読み終わるや否や、あれこれ感想を言い合うということを繰り返してきました。もちろん、皆『キン肉マン』が大好きだからです。
今回のように、ゆでたまご先生・編集部としてはどこまでが許容できるのか、その線引きも不明確なまま法的措置を仄めかす声明が出されてしまうと、上述のとおり、感想ツイート程度であれば法的問題は生じないと思われるとはいえ、ファンとしては感想を言うことも委縮して難しくなってしまいますし、盛り上がっているところに冷や水を浴びせられたような気分になってしまうのではないかと思います。他方で、法的に問題ないとはいえ、作者・編集部の考えも尊重されるべきであることも間違いありません。作者・編集部の考えを理解してもらうためにも、声明の表現やその後のツイート内容をもう少し慎重に吟味しても良かったのではないかと思います」

   なお小林弁護士は来春、「オタクのオタクによるオタクのための法律書」をテーマにした『オタク六法』(KADOKAWA)を出版予定だ。同書では、「オタ活」中のトラブルなどについて、ケーススタディを紹介。SNS利用の注意点やトラブルにも触れる予定で、「オタクライフをエンジョイする皆さんの法的なガイドブックになれば良いですね」と語っている。

   古川さんは「週プレNEWS」編集部の声明について、適切な対応だという見解を示しながらも、ネタバレの許容範囲については分かりづらいと述べる。

「ゆでたまご先生が心を痛めている以上、適切な対応だと思います。一方で読者の方が『どこまでやっていいのか』と不安や心配になっている面もあり、ネタバレの範疇や、どこからは問題で、どこからは許容範囲なのかわかりづらいという問題もあります。
しかし、これらを権利者がルールを明確にしてしまうと、NGのものへの対応を強くしないといけないという圧力にもあり、ルール上は許容のものだが、問題があるケースへの対応が難しくなったりします。それをやる場合、厳しめに線引きをすることになり、権利者も読者も損してしまうということになりかねません。 その意味で、実務的に書ける範疇としては、権利者側の対応としては妥当な範囲だと思います。
むしろ、我々のような権利者ではない漫画関係者が、双方が納得しやすい基準の提案などを行うべきなのかもしれません」

   そして古川さんは、「ネタバレ」は人によって捉え方が違うとし、自身のブログでその見解について記している。(「マンガのネタバレ問題がややこしい理由」)

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