機内でのマスク着用を拒否したことがきっかけで乗客が降機させられるトラブルが北海道エアシステム(HAC)でもあり、当事者の乗客らはこの措置にツイッター上などで反発している。
乗客らは、マスク着用は要請に過ぎないのに、拒否の理由まで言う必要があるのかと主張している。このことについてどう考えるのか、HACなどに話を聞いた。
「他の乗客がいる場所で、自分の病気について話したくなかった」
釧路空港発関西空港行きのピーチ機で2020年9月7日、マスクを拒否した男性客が、他の乗客に大声を出すなどして、航空法第73条の安全阻害行為で新潟空港で途中降機させられた。
その騒ぎが収まらないうちの12日、奥尻発函館行きのHAC機でも、マスク拒否をきっかけに、別の男性客が安全阻害行為で離陸前に降機させられるトラブルが起きた。
各メディアの報道などによると、この男性客は12日昼過ぎ、HAC機に搭乗後、客室乗務員からマスク着用を求められたが拒否し、乗務員らが10分ほどその理由を問いただした。しかし、男性客は、「答えたくない」などと主張し、機長の判断で乗務員から求められて機内から降りた。その際、男性客には、「命令書」と書かれた赤い紙が渡された。結果として、30分ほど出発が遅れ、他の乗客21人に影響が出た。
男性客は、各メディアの取材に対し、マスクを着けるとじんましんなどの症状が出る持病があったと説明し、「他の乗客がいる場所で、自分の病気について話したくなかった」と答えなかった理由を語った。トラブルについて主張するためのツイッターアカウントも開設し、機長が職権を濫用して義務でないのにマスクを着用させようとした航空法151条に当たるなどとして、刑事告発する構えまで見せている。
「着用できないのでしたら、事前に申し出いただきたかった」
今回のトラブルについて、HACの広報担当者は9月14日、乗客間で言い争いがあったわけではなく、座席に着いた男性客に客室乗務員がマスク着用を求めたことがきっかけだったと、J-CASTニュースの取材に説明した。
同じ列には、2席と通路を挟んで1席があり、男性客は最前列で、この列にも後ろの列にも他に乗客はいなかった。しかし、換気がされているとはいえ機内は密室状態にあることから、男性客にマスク着用を求めたとした。
これに対し、男性客は、出発を促す言動を繰り返したほか、質問をはぐらかし、要請がしつこいと反発したという。
「答えたくない事情についてお聞かせいただけない理由もお話しいただけませんでした。大声を出されたわけではなく、威圧的なこともなかったと認識していますが、他のお客さまは逃げる場所がなく、こちらも機内秩序の維持を気にしています。マスクをしなかったことが理由ではありません」
ポスターなどでマスク着用を呼びかけていたとして、広報担当者は、「着用できないのでしたら、事前に申し出いただきたかったですね。機内でも、紙に書いて伝えることもできたと思っています」と話した。
何も不当なことはやっていないとして、航空法151条には当たらないとしている。男性客への損害賠償請求については、そこまで考えていないという。
マスク着用を巡っては、ピーチ機を降ろされた男性客も、義務ではないので拒否する理由を言う必要はないはずだとツイッターなどで主張している。
航空各社でつくる定期航空協会は、この点について、取材にこう説明した。
「新型コロナ対策の専門家会議が5月にマスク要請などを提言したのを受け、国交省の航空局と相談して協会でガイドラインを作成しました。大前提となるのは、他のお客さまがいますので、マスク着用は、感染を拡大させない目的だということです。マスク拒否の理由を言わないことへの対応については、各航空会社の判断になると思います」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)