ホンダが、米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)との提携を拡大し、北米での四輪自動車事業で開発や生産など包括的な協業を目指すことになった。車台やエンジンなどの基幹部品の共通化を進める考えだ。自動車業界は自動運転など先端技術の開発競争が激化しており、ホンダは最重要の北米市場でGMとの関係強化により大きなコスト削減効果を見込む。今回は資本提携には踏み込まないが、これまで堅持してきたホンダの「独立路線」への影響も注目される。
今回の提携で、今後開発する新型車について、エンジンやハイブリッド(HV)システムなどパワートレーン(駆動装置)を含めた車台の共通化を検討する。併せて部品の共同調達も検討し、規模のメリットを追求し、両社共同開発車以外にも範囲を広げる可能性もある。
「北米で大幅なコスト効率の向上」を期待
両社の関係は1999年に一部エンジンの相互供給などが始まりで、近年は、2013年に水素で走る燃料電池車の技術開発で提携したほか、18年にはホンダがGM傘下の自動運転を手がける会社に出資し、無人ライドシェア(相乗り)の自動運転車の開発に共同で乗り出し、さらに20年4月には北米向けのホンダの電気自動車(EV)の共同開発(GMが生産してホンダに供給)を発表するなど、主に市場が小さい次世代技術を中心に関係を強めていた。
今回の提携は、その延長での協業の深化といえばその通りだが、ガソリンエンジン車やHV車など、現在の事業全体の中では本丸中の本丸を対象とする点で異例だ。そこにまで踏み込んだのは、新型コロナウイルスの感染拡大による販売の大幅落ち込みもあったが、何より、両社の構造的な弱点への危機感があった。
「最大市場の北米で大幅なコスト効率の向上が実現可能になる」(ホンダの倉石誠司副社長)、「両社のリソース活用により、将来のモビリティ技術への投資を加速できる」(GMのマーク・ロイス社長)――9月3日の提携発表にあたり、両社首脳が発表したコメントに、思いが表れている。