宇宙旅行の提供を目指すベンチャー企業「PDエアロスペース」(名古屋市)が、沖縄県の下地島空港(宮古島市)を拠点に機体の開発や「宇宙港」の整備に乗り出すことになった。
沖縄県が2017年に公募していた「下地島空港及び周辺用地の利活用事業提案」にPD社が応募して採択が決定。20年9月10日に両者が基本合意を結んだ。かつては航空ファンの間で「聖地」として知られた下地島空港が、順調にいけば25~26年には「宇宙行き」フライトの拠点になる予定だ。
かつてはジャンボジェットが離着陸繰り返す「絶景スポット」
下地島空港は、かつては日本航空(JAL)や全日空(ANA)がパイロットの訓練に使用。ボーイング747型機をはじめとする大型機がコバルトブルーの海を背景に、全長3キロの滑走路から離着陸を繰り返す光景が「絶景スポット」として知られてきた。JALとANAが下地島での訓練を取りやめ、定期便が飛ばずに中型機や小型機が訓練するのみになっていたため、県が空港の使い道を探していた。それに応える形で三菱地所が旅客ターミナルの整備を進め、18年からジェットスター・ジャパンをはじめとする国内外のLCCが乗り入れている。
PD社が目指しているのは、翼のついた「宇宙飛行機(スペースプレーン)」を利用した、「準軌道(サブオービタル)」と呼ばれる形式の宇宙飛行。ジェットエンジンを使って離陸し、高度15キロでロケットエンジンを点火。高度110キロまで上昇して高度を下げ、高度30キロで大気圏に再突入。その後は再びジェットエンジンを使って飛行し、空港に戻る。1フライトの所要時間は約90分で、そのうち5分間にわたって無重力状態になる。