自民党総裁選に立候補した菅義偉官房長官による「消費税率引き上げ必要」との発言が大きな反響を呼んでいる。2020年9月11日11時時点で「消費税増税」を含むツイート数は約7万件。新型コロナ禍による景気悪化でむしろ消費減税の必要性が叫ばれる中、「逆張り」とも言える発言だけに、驚きを持って受け止められたようだ。
発言は9月10日夜の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京系)で飛び出した。自民党総裁選に立候補している石破茂・元幹事長、岸田文雄・政調会長とともに出演。司会者が「消費税は将来的に10%より上げる必要があるか」と質問したところ、「○」「△」「×」の3択のうち菅氏だけが「○」を挙げた。石破氏と岸田氏は「△」と答えた。
「コロナ禍で大変な時に」「国民経済は完全に破綻」
菅氏は「なかなか、引き上げるという発言はしない方がいいだろうと思った」と述べつつ、「これだけの少子高齢化社会で、頑張っても人口減少は避けることはできない。将来的なことを考えたら、行政改革は徹底して行った上で、国民にお願いをして、消費税は引き上げざるを得ない」と持論を語った。総裁選で菅氏が消費税増税に言及するのは初めてだ。
この発言が10日夜から11日朝にかけて相次いで報じられると、ネット上は反対論が続出。ツイッターでは11日11時時点で「消費増税」のワードを含むツイートが約7万件を超え、トレンド入りした。大半が「反対」の考えからの投稿だった。
「このコロナ禍では尚更必要不可欠となっている消費税減税を否定するばかりか、逆に『増税』にまで言及した菅官房長官。自助をしろという同じ口で増税と。これで、もうハッキリしただろう。これ以上、自民党に国政の舵取りをさせれば国民経済は完全に破綻する」
「コロナ禍で日本中が大変な時に消費税増税などとよくも言えたもんだ。行政のスリム化が条件だというなら、むしろ消費税減税ができるということじゃないか」
SNS分析ツール「ソーシャル・インサイト」など各種のツールやサイトで調べても、ツイート・リツイートの大半は増税に反対する趣旨のものだった。
菅氏は「将来的なこと」と前置きした上で発言したわけだが、石破氏や岸田氏だけでなく、 新・立憲民主党の代表戦でも枝野幸男代表と敗れた泉健太氏が消費税の減税を唱えるなど、政界では消費税の減税論が今の「主流派」だ。新型コロナウイルスの感染拡大で経済が冷え込んでいるため、減税で家計を支援するという主張だ。
「安倍総理は『今後10年くらいは上げる必要はない』、私も同じ」と強調
そもそも「アベノミクス」を継承すると表明する菅氏は、積極的な財政出動に後ろ向きで財政規律を重んじる財務省を「毛嫌い」した安倍首相と同様に、消費増税には後ろ向きとみられてきた。永田町では20年秋の衆院解散・総選挙も視野に入れているとされる中で、この時期の消費増税発言は新政権発足後も尾を引く可能性がある。
菅氏は11日午前の記者会見でも発言について問われ、「総裁候補として個別の発言については控える」と前置きした上で、
「あくまでも将来的な話としてお答えしました。(中略)安倍総理はかつて『今後10年くらいは(消費税率を)上げる必要はない』と発言されていますが、私も同じ考えです。(10日夜の発言は)あくまでその先のことを念頭に置いた話です」
と述べ、税率引き上げの時期は「将来的な話」とことを繰り返した。
SNSなどでの反対論も意識したのだろう、直ちに増税するわけではないという「念押し」をした形と言える。
安倍政権では5%だった消費税率を2014年4月に8%、19年10月に10%に上げた上で、安倍晋三首相が19年7月、10%を超える消費税増税に関して「今後10年くらいは必要がない」と述べていた。