論文はあくまで「科学的検証結果の報告」
次亜塩素酸水の効果について、厚労省は公式サイト上で、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の検証を元に「一定濃度の『次亜塩素酸水』が新型コロナウイルスの感染力を一定程度減弱させることが確認されています」と説明している。これを根拠に、新型コロナウイルス対策の「拭き掃除」として、有効塩素濃度80ppm以上の次亜塩素酸水をたっぷり使って、モノの表面をヒタヒタに濡らし、少し時間を置いて拭き取るよう推奨している。
一方、今回の北里大研究グループの試験では濃度が最低100ppm以上、最高250ppm以上の次亜塩素酸水が使われた。それにもかかわらず、消毒効果は不十分という結果になった。
今回の試験に携わった北里大学大村智記念研究所の片山和彦教授は、9月7日のJ-CASTニュースの取材に対し、こう強調した。
「私どもの論文は、実験検証の結果を報告しています。つまり、科学的検証結果の報告です。国による呼びかけを否定する、肯定するなどの目的ではなく、実験結果を報告しているのです」
ただ、片山教授自身が国立感染症研究所に勤務していた際、複数のガイドライン策定にかかわってきた経験として、以下のように語っている。
「この結果だけではなく、複数の実験結果の報告を受け、ガイドラインを見直すか否かは、厚労省や、経済産業省が話し合いの上に決めていきます。ガイドラインは、その時々の論文報告、WHO(世界保健機関)のガイドライン、海外のCDC(アメリカ疾病予防管理センター)、FDA(アメリカ食品医薬品局)にあたる機関の報告やガイドラインを参考に時々刻々と変化していきます」
「私達の報告に加え、複数の検証結果が出揃い、客観的評価ができるようになった時点で、現行のガイドラインを改定する必要が生じた場合、科学的検証に基づいて、新たなガイドラインを策定するでしょう」