自民党総裁選は菅義偉氏が最優勢である。アベノミクス踏襲を掲げているが、経済政策以外に省庁再編にも意欲を示している。
デジタル庁構想に加え、厚生労働省再編にも言及し、中央省庁の「再々編」の可能性も出てきている。
官僚に対する権勢を維持できる
現在の1府12省庁体制は、1996年橋本政権で議論され、2001年森政権に発足した。これは、戦後初の本格的な省庁再編で、政治主導、縦割り行政打破を狙っていた。
しかし、旧建設省、運輸省、国土庁、北海道開発庁が合併した国土交通省、旧総務庁、郵政省、自治省を一体化した総務省、旧厚生省、労働省による厚労省という巨大官庁が生まれた。
特に、厚労省は、業務が多岐にわたり増え、国会対応もままならないと言われている。2018年9月、自民党行政改革推進本部(甘利明本部長)から、厚労省の分割を促したほか、子育て政策を担う官庁の一元化が提案された。その当時、自民党総裁選の最中だったが、争点化されることなく、議論は立ち消えになった。
ズバリいえば、省庁再編は霞ヶ関役人の最大関心事だ。役人の本能として、仕事の拡大がある。逆にいえば、省庁再編では、各省所管分野の争奪があり、「領地」な拡大縮小で各省庁は悲喜交交(こもごも)になる。その中で、政官の関係では政治が優位になることが多い。
菅氏は、第二次安倍政権で創設された内閣人事局のシステムをうまく使い、官僚を適切にコントロールしてきた。その結果、歴代官房長官の中でも屈指の官僚掌握能力を持っている。
省庁再編を政策の柱にすれば、菅氏の官僚に対する権勢を維持し、優位を保てるだろう。自民党内でも省庁再編は議論されてきたので、各派閥も表だって反対しにくい事情もある。ただし、省庁再編の議論が具体的に進むと、特定の省庁での不満が出てくる可能性もある。そうなると、各派閥と省庁が結託して、総論賛成各論反対に回る可能性もある。この辺りについて、マスコミはどっちにつくのかも興味深いところだ。