ボクシングのWBA世界ミドル級スーパー王者サウル・アルバレス(30)=メキシコ=が、映像配信サービスのDAZNと自身のプロモーターであるオスカー・デラホーヤ氏に対して契約違反を理由に米ロサンゼルス連邦裁判所へ訴訟を提起した。複数の海外専門メディアが2020年9月9日に報じたもので、アルバレスはDAZNとデラホーヤ氏に2億8000万ドル(約297億円)の損害賠償を求めている。
デラホーヤ氏との関係悪化が表面化
アルバレスは2018年10月にDAZNと5年11試合で3億6500万ドル(約402億円)の大型契約を結んだ。スポーツ選手の契約では史上最高額とされるもので、大きな話題を呼んだ。アルバレスはDAZNとの契約後、18年12月に1試合、19年は5月と11月に試合を行い、計3試合をこなした。その一方で今年は新型コロナウイルスの影響でここまで試合が組めず、アルバレス陣営は不満をつのらせていた。
アルバレスのファイトマネーは1試合3500万ドル(約37億円)とされ、契約を交わしているDAZNは常にハイレベルの対戦相手を求めていた。それゆえ対戦相手選びには慎重で、今年に入ってから他団体の数人の王者が対戦相手候補に挙がるも、交渉がまとまらなかった。WBA世界ミドル級王者・村田諒太(帝拳)も一時、アルバレスの対戦候補として浮上したが実現には至っていない。
今回の訴訟問題で浮き彫りになったのが、アルバレスとデラホーヤ氏との関係だ。アルバレスはデラホーヤ氏が代表を務めるゴールデン・ボーイ・プロモーションに所属しており、これまでデラホーヤ氏がプロモートしてきた。関係者の間では最近になってアルバレスとデラホーヤ氏の関係が悪化しているとの声が上がっていたが、今回の訴訟で両者の関係悪化が表面化した。
「リングの対戦相手を怖がることはない」
アルバレスは専門メディアが格付けするパウンド・フォー・パウンド(PFP)でトップに君臨しており、米国の老舗専門誌「リングマガジン」の最新のPFPでもトップを維持している。このままDAZNとデラホーヤ氏との関係がこじれ、訴訟問題が長期化すればアルバレスのリング復帰が遠のく可能性が出てきた。
専門メディア「BoxingScene」によると、アルバレスは「俺は世界でナンバーワンのパウンド・フォー・パウンドだ。リングの対戦相手を怖がることはない。放送局やプロモーターが俺をリングの外に追いやることは許さない。俺はボクシングに戻るために訴訟をした。そしてファンが見るに値する試合をする」と語っている。