助成制度には「線引き」 根強い支援拡大の声 なぜこれまで「適用外」だった?
9月8日から9日にかけて投稿されたツイートの中にも、費用負担の重さに加え、周囲の理解の少なさに対する思いを吐露するものが多くあった。
「不妊治療が実って妊娠中だけど、この妊娠につながった今回の採卵~移植1サイクルの治療費は90万円。これまでの治療総額は200万円。でも当事者が困ってるのここだけじゃない。社会の無理解。保険適用によって、なにより社会的認知が進むんだよ...!!!」
そもそも、なぜ不妊治療はこれまで保険の適用外だったのか。厚生労働省によると、保険の対象となるのは、命や生活に支障が出る、そして治療で体の機能が回復する「疾病」だ。不妊症では「日常生活が送れないことはない」という考えがあった。今でも医学会や厚労省の一部では「子どもをつくることが『治療』と言えるのか」という考え方もある。
不妊治療のうち、体外受精と顕微授精については費用の一部を助成する制度はある。ただ、治療開始時の妻の年齢が44歳未満で、合計所得730万円未満の夫婦が対象だ。1回15万円(初回は30万円まで)の助成が3回(妻が41歳未満の場合は6回)まで受けられる。
ただ、先出の目黒区の女性の場合、治療を始めた最初の年は助成を受けられたが、2年目以降は地方公務員の夫との合計所得がぎりぎり730万円を超えたため、適用されなかった。
「助成額も15万円だと1回の治療費の3分の1くらい。とても助かりましたけど、資金的な負担はまだ重かったですね」(目黒区の女性)。
先出のNPO「Fine」のアンケートでも、所得制限を超えるため助成金を受けられないとの回答が4割にのぼった。
20年5月に閣議決定された政府の「少子化社会対策大綱」では、不妊治療について、「高額の医療費がかかる体外受精や顕微授精に要する費用に対する助成を行うとともに、適応症と効果が明らかな治療には広く医療保険の適用を検討し、支援を拡充する」とこれまでより踏み込んだ表現で、その必要性が盛り込まれた。7月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」でも、大綱の中で速やかに着手するべき政策の一つに不妊治療を挙げている。
今回の菅氏の発言は、こうした流れを「加速」する形で、これまで対象外だった人工授精や体外受精なども含めて、保険適用の範囲を広げようとするものだ。