苦しむ患者、「保険適用になるのなら、もう少し頑張る」
こうした関心の高さもあってか、9日に行われた自民党総裁選の候補者討論会では、石破茂・元幹事長が演説の冒頭で「大変な痛みと大変な経済的な負担に耐えながら不妊治療をしている人は日本に46万人いる」と言及。一方、岸田文雄・政調会長は「出産費用についても思い切って支援を行うことで実質ゼロにするなど予算的な後押しも必要」などと述べ、出産費用の「実質ゼロ」を打ち出した。
一方で、ツイッター上では一部で医療財源の観点から慎重さを求める声もあった。
「不妊治療に保険適用は反対 お金なくて諦めてた人たちが我も我もと始めたら医療費パンクするのは明らか 中には、到底子育てできる環境にない人までし始める可能性もある それよりも、既に産まれたが親からの虐待により行き場がなくなった子供達への支援に予算回してほしい」
「不妊治療への過度な保険適用拡大を行ってしまうと、後になっての適用縮小は非常に困難。現実的には40歳だと90%以上、44歳だと98%以上の方は不妊治療を行っても子供を得る事はできない事の周知も必要。医療の財源は限られているので、既にこの世にいる子供たちへの支援とのバランスをとる必要がある」
一般的な不妊治療では、排卵日付近に性交する「タイミング法」▽活発な精子を子宮内に入れる「人工授精」▽精子と卵子を体外に取り出した上で受精させ、再び子宮に戻す「体外受精」▽顕微鏡で確認しながら取り出した精子を卵子に直接注入する「顕微授精」がある。人工授精、体外受精と顕微授精は保険の適用外で、1回で10数万~数十万円の費用がかかる体外受精や顕微授精は特に自己負担が重い。
不妊に悩む人を支えるNPO法人「Fine(ファイン)」が2018年度に行ったアンケートによれば、通院開始からの治療費の総額が100万円以上の割合は56%に上った。
広告会社に勤める東京都目黒区の女性(38)は菅氏の発言を知り、8日夜に「ようやく念願が叶いそうです」と期待を込めてツイートした。治療を始めて約3年。人工授精、体外受精、顕微授精と進んだが妊娠に至らず、治療費は総額400万円近くになる。それでも何とか子どもを授かりたいと「再チャレンジ」を検討しているが、夫の貯金と合わせた今の資産では再度の顕微授精の費用を出せそうになく、親に借りるか借金をするか、またはあきらめるか、悩んでいた。
「妊娠がだめだった、とクリニックから伝えられるたびに、私自身が『だめな人間だ』と否定されたみたいで、すごく傷つくんです。子どもが生まれたら、家がほしいとか家具をそろえたいといった夢もあるのですが、貯蓄がどんどん無くなるから現実のこととして考えられない。もし(不妊治療が)保険適用になるのなら、苦しいけど、もう少し頑張ってみたいと思います」