自民党総裁選(2020年9月8日告示、14日投開票)に立候補した石破茂氏、菅義偉氏、岸田文雄氏は9月9日、党本部で行われた自民党青年局・女性局主催の公開討論会に出席した。
国の政策に直結するような議題の一方、「妻への思い」「歴史上の人物に例えると」など候補者の人柄をうかがうようなテーマも目立った。中でも「自身の子供」に対する質問では、3人の「子育て観」の違いが浮き彫りになった。
オンラインで各地から質問受け付ける
討論会はオンラインで各都道府県支部連合会の青年局、女性局などとつなぎ、質問を受け付けた。総裁候補者3人は各局員からの質問に対し、持ち時間1分以内で答えるというもの。少しでも時間を超過すると、司会の三原じゅん子参院議員らが「ありがとうございました」とシャットアウトする徹底ぶりだった。
憲法改正、少子化、財政など国の政策に直結するようなテーマが話題にのぼる一方で、候補者の人柄をうかがうような質問も目立った。例えば、愛知県連の神戸洋美女性局長(愛知県議会議長)は、政治活動を陰で支えてきた妻への思いを「感謝の言葉」とともに教えてほしいと投げかけた。
候補者3人が苦笑いを浮かべる中、石破氏は「私にとってはなくてはならない人。有権者、支持者のことを第一に考えてくれる」、菅氏は「今回の総裁選で、支援を取り付けるのに一番苦労したのが家内です」、岸田氏は「国会議員になって27年間、毎日毎日電話をするようにしておりますが、それでここまでついてきてくれた。心から感謝をしています」と語った。
また、愛知県連の藤原宏樹青年局幹事長(愛知県議会議員)は「自身を歴史上の人物に例えると誰か」と質問。これに菅氏は「学生時代から勉強をしなかったが、歴史ものは幅広く読んでいた」と前置きしつつ、「具体的に自分をどの武将に例えるかは難しい」と明言を避けた。
岸田氏は「我慢強さ」「辛抱強さ」という点で徳川家康に共感を得たとしつつ、現在では「時代を大きく転換させる政治家」として、戦後体制を築いた池田勇人元首相のように「ありたい」とした。一方、石破氏は織田信長、豊臣秀吉、家康の天下人を引き合いに出しつつ「流行りで言うわけじゃないが、明智光秀は『鳴かぬなら逃がしてやろうホトトギス』と言ったそうです。私は、そういうことだってあっていいのではないか」と持論を示した。
「中学校、高校では運動部に入って最後までやれ」
中でも3人の考え方の違いが浮き彫りになったのが、「子育て」に対する考え方だ。石川県連の安居知世女性局長(石川県議会議員)は「子育てをする中で、父親として子供たちに伝えたかった事」を質問した。
3人の息子がいる菅氏は「息子たちにとっては厳しい父親であったと思います」としつつ、「子供たちに言ってきたことは『とにかく中学校、高校では運動部に入って最後までやれ』ということです。運動部の中で、育ててもらう。勉強しなくてもいいから、人との関係を講じることができるのは、そうした『部活』だと思っています」と、部活を通じた人間教育の重要性を主張した。
菅氏と同じく3人の息子がいる岸田氏も「息子との接触は限られていた」と政治家ならではの苦悩を語りつつ、「今元気で成人をしてくれたことについては、逆に感謝をしたいと思います。自分の道をしっかり選んで、その道で悔いないように頑張ってもらいたい」と、子供の意思を尊重する考え方を示した。
2人の娘がいる石破氏も「妻が娘の部屋に選挙ポスターを貼り、『はいこれは誰でしょう』なんつってやっていて、家に帰ったら『ポスターの人が来た』と(娘に)言われて愕然としたことがあります」とエピソードを披露。一方で、「一番大事なのは、泣いている子がいたら『どうしたの』って言える、そういう子であってほしい。そう思ってきました。(期待に)応えてもらえたらうれしい」と「優しさ」を持つことの大切さを語った。