菅義偉氏の「支持率」、わずか4日で2.6倍に 世論調査で支持「急伸」の背景は

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   次の首相・自民党総裁に誰がふさわしいかを尋ねた朝日新聞の世論調査で、菅義偉官房長官の「支持率」が、4日前に報じた共同通信の世論調査と比べて急伸している。菅氏は共同では14.3%だったが朝日では2.6倍の38%に。一方、共同で34.3%だった石破茂・元自民党幹事長は朝日では25%と落ち込んだ。この間、「世論」にどんな変化があったのか。

   共同通信の世論調査は2020年8月29日と30日に実施。一方の朝日新聞は9月2日と3日に行われた。ともにコンピューターで無作為に電話番号を作成し、固定電話と携帯電話に調査員が電話をかけるRDD方式で行われ、有効回答数は共同が固定電話で528人、携帯電話で522人の計1050人。朝日は固定から534人、携帯から596人の計1130人。調査規模もほぼ同じと言える。

  • 共同通信と朝日新聞の世論調査、4日違いで結果なぜ異なる?
    共同通信と朝日新聞の世論調査、4日違いで結果なぜ異なる?
  • 共同通信と朝日新聞の世論調査の違い
    共同通信と朝日新聞の世論調査の違い
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識者、「大きな報道、大量の報道が影響か」

   ちなみに他の候補者は、岸田文雄・自民党政調会長が共同で7.5%、朝日が5%。まだ総裁選の構図が固まっていなかった段階の共同通信は河野太郎・防衛相や小泉進次郎・環境相らについても尋ねており、河野氏が13.6%、小泉氏は10.1%だった。

   朝日新聞は2日夕の段階で出馬表明していた菅、石破、岸田の3名のみを実名で質問。他に「この中にはいない」という選択肢を28%の人が選んだ。

   結果的に、4日ほどで菅氏が14.3%→38%、石破氏が34.4%→25%と大きく変動した形。この変化をどのように見ればいいのか。

共同通信と朝日新聞の世論調査の違い
共同通信と朝日新聞の世論調査の違い

   世論調査に詳しい前田幸男・東大教授は、共同と朝日の世論調査は「どちらも典型的なやり方で調査を行っている」とした上で、次のようにJ-CASTニュースに解説する。

「2社の調査時期の間に、菅さんが『優位な情勢』などと大きく報じられたり、菅さんの出馬会見がテレビなどで何度も放送・配信されたりして、回答者に大きな影響を与えた可能性が高いです。石破さんが出馬する意向であることは以前から報じられていましたが、菅さんの出馬については新しくインパクトの強いニュースなので、より大きく大量に報道されました。普段は政治に関心が薄い人にとっても、報道量が増えることで(菅氏の)存在感が大きくなったと言えます」

雪崩打つ派閥の支持、どう見れば?

   共同の調査から朝日の調査までの4日間で、状況は激変した。

   共同通信の調査は8月29日から開始したが、この時点で菅氏は自民党総裁選に出馬するかどうかの態度を表明していない。が、翌30日11時台に新聞社や通信社が相次いで「菅氏が自民党総裁選出馬へ」と速報を配信。菅氏が二階俊博・自民党幹事長に総裁選に出馬する意向を伝えたという内容で、ほぼ全ての既存メディアが追随した。二階派も菅氏を支持するという続報も30日午後に各社が流した。

   共同通信の調査への回答者は、こうした動きを十分に把握せずに答えた人もいただろう。共同は調査結果を8月30日20時台にインターネットで配信した。

記者会見で自民党総裁選への出馬を正式に表明した菅氏(2020年9月2日)
記者会見で自民党総裁選への出馬を正式に表明した菅氏(2020年9月2日)

   翌31日以降は自民党細田派や麻生派など有力派閥が雪崩を打つように菅氏支持を表明。過去に石破氏への支持票が多かった地方の党員・党友による投票も「省略」されることが決まり、各新聞社やテレビ局も「菅氏有利」と繰り返し報道。2日17時の菅氏の出馬会見と合わせる形で朝日新聞の調査が始まったため、回答者の多くは「菅氏が有利」というイメージを持ちながら回答した可能性がありそうだ。前田教授がさらに解説する。

「石破さんについてはこの間、自民党内で『嫌われている』『評判が悪い』などとネガティブな報道もそれなりにありました。一方で菅さんについては出馬する事実や形成が優勢であるといった、論評抜きのニュートラル(中立的)な報道の方が多かった印象です。ニュートラルな情報は瞬間的にはポジティブに働く効果があります」

   自民党総裁選は国会議員らによる投票であり、今回のような「世論」の急激な変化と、一般の有権者の投票行動には関係ない。ただ、自民党の派閥や議員の多くが「勝ち馬」に乗る形で菅氏への支持に入り、1国の首相が決まりそうな状況はどう見ればいいのか。

「今回、自民党は政策論争をせずに『永田町の論理』で首相を決めようとしていますが、これで長期的に有権者の支持を得られるのか、よく考える必要があると思います。一般の有権者に政策・理念をアピールする機会を大きく縮小したわけですから」(前田教授)

朝日の世論調査、一時トレンド入りも

   なお、朝日新聞は同じ世論調査で第2次安倍政権の実績評価も尋ねている。安倍政権を「大いに(評価する)」と回答した17%と「ある程度(評価する)」の54%と合わせて71%が評価するという結果を受けて、「安倍政権を『評価する』が71% 朝日新聞世論調査」という見出しの記事を3日22時過ぎに配信した。

   安倍政権に厳しい論調で知られている朝日新聞がこうした見出しの記事を配信したことにツイッターなどSNSでは安倍政権に対するそれぞれのスタンスから、

「朝日新聞の世論調査で高評価が出たことに驚きだが、逆にデータに正直と言えるのかも?」
「面白いねぇ、朝日の世論調査でこれなんだもん笑」

   などと、様々な反応が相次ぎ、「次期首相ふさわしいのは『菅氏』最多」の記事と合わせて、一時は「朝日新聞世論調査」がツイッターのトレンドワード入りした。

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