菅義偉官房長官が自民党総裁選への出馬を正式に表明した2020年9月2日夕の会見で、久々に東京新聞の望月衣塑子(いそこ)記者が質問する場面があった。菅氏と望月氏は森友・加計問題をめぐって激しいやり取りを展開したことで知られるが、4月に緊急事態宣言が出されてから首相官邸の記者会見は「ペン記者は1社1人」に限られるようになったため、望月氏は官邸の記者会見に出られない状態が続いてきた。
望月氏は、官邸の会見で「質問妨害」があったことを問題視している。この日の会見でも、1分近く続いた望月氏の質問の途中に司会者から「簡潔にお願いします」という声が飛ぶ場面もあったが、番記者以外の記者や、内閣記者会に所属していない記者も指名されていたこともあって、望月氏は「割と自分自身の言葉で語っている」と、菅氏の対応に一定の評価をしていた。
「これまでとはかなり違っていろんな記者が指されている」
菅氏の出馬表明会見は、当初30分だと予告されていたが、約45分にわたって行われた。場所は、首相官邸の会見室よりも広い、衆院第2議員会館の多目的室。普段は官邸の記者会見に入れない記者も多く参加し、IWJやニコニコ動画などネットメディアの記者も指名されたが、フリーランスの記者は指名されず、終盤に抗議の声があがった。
望月氏が指名されたのはその後。記者会見の質問のあり方に関する質問だ。
「今日、長官の会見の状況を見て、これまでとはかなり違っていろんな記者が指されているなぁと感じました」
と切り出した上で、官邸の会見では「質問妨害」があった経緯を説明し、総裁に選ばれた際には番記者の追及に応じるつもりがあるかを質問。続けて、安倍晋三首相の会見が
「台本通りではないかと、劇団みたいな、お芝居じゃないかという批判もたくさん出ていた」
などと指摘したところで1分近くが経過し、司会者から
「すみません、時間の関係で簡潔にお願いします」
という声があがった。そこで望月氏は、質問を次のように締めくくった。
「(菅氏が総裁に選ばれた際には、事務方が作成した)紙を読み上げるだけでなく、長官自身の言葉、生の言葉で、事前の質問取りもないものも含めて、しっかりと、会見時間を取って答えていただけるのか」
「早く結論を質問してくれれば、それだけ時間が浮く」
菅氏の答えは、「限られた時間の中で、ルールに基づいて、記者会見は行っている。早く結論を質問してくれれば、それだけ時間が浮く」。望月氏の質問には直接こたえず、聞きたいことが分かるまでに時間がかかる質問を皮肉った形だ。望月氏もJ-CASTニュースの取材に対して、「やっぱり、一言皮肉が言いたかった(のだと)と思う」と話していた。
望月氏は、今後の会見がどうなるかについては「分からないですよ」とする一方で、この会見に限っては、
「割と自分自身の言葉で語っているかな、と(感じた)。紙ばっかり見ていないので。私のときは『都合が悪くなると逃げちゃう』というのがあったが、立ち止まって朝晩の番記者さんへの対応もしっかり応じないといけない、ということはあるのでは」
「この会見が『番記者さんだけで打ち切ってるなぁ』では疑問だが、本人の中では、なるべく多くの記者に答えたい、という思いがあるのでは」
などと一定の評価をしていた。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)