ぜんぶドルチェ&ガッバーナのせいだ 瑛人・香水の「Win-Winな風評被害」【ネットメディア時評】

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   2020年夏、日本で一番「風評被害」をあびているのは――。そう聞かれたら、「ドルチェ&ガッバーナ」と即答する。

   ドルガバブランドの芳香の「せい」で、かつての恋人を思い出してしまうと歌うヒット曲「香水」。ともすれば、ただの言いがかりだが、どうやらネット上ではWin-Winな関係が築けているようだ。

  • 「香水」が流行っている(画像はイメージ)
    「香水」が流行っている(画像はイメージ)
  • 「香水」が流行っている(画像はイメージ)

有名人が見せる「懐の深さ」

   「香水」は、シンガーソングライター・瑛人(えいと)のリリースから約1年、今春TikTok(ティックトック)で火が付き、著名人が「歌ってみた」動画に続々参戦した。そして、ここに来て瑛人自身の露出も増え、ネットメディアにも相次いで登場している。

   BuzzFeed Japanは8月下旬、瑛人へのインタビューを複数本にわたって掲載した。なかでも「【ガチ検証】ドルチェ&ガッバーナの香水をつけて取材したら瑛人は気づくのか?」は、これまでのBuzzFeedの「芸風」とは、見出しからして一線を画する。

   インタビュアーの神庭亮介記者が、ドルチェ&ガッバーナの「ライトブルー」をまとい取材するのだが、30分たっても、40分たっても、気付いてくれない。そしてタイムリミットが近づいて......と、ここから先は記事に譲るが、ネタばらし後に瑛人が見せる「人間味」は魅力的だ。

   近い構図のウェブ記事に、ロケットニュース24の「突撃!イングヴェイ」がある。ギタリストのイングヴェイ・マルムスティーンに扮した中澤星児記者が、取材中に演奏を試みる過程を追ったシリーズで、これまで安達祐実、千眼美子(清水富美加)、のん(能年玲奈)といった有名人らが登場した。こちらも、インタビュー本編と、裏に走っている「企画」のギャップ、そして取材相手の「懐の深さ」が調和している。

あの資生堂が「香水のせいだよ」言及

   お盆明け、「香水」のサビを引用した「"ドルチェ&ガッバーナのその香水のせいだよ"でフレグランスの注目度が急上昇」と題するプレスリリースが出た。ドルガバ製品への注目度が今春以降、上昇していると伝えているのだが、その発表元は調査会社でも、通販サイトでもなく、あの資生堂だった。

   資生堂グループは16年、ドルガバとフレグランス事業などの独占グローバルライセンス契約を締結している。だからリリースを打つこと自体に何ら不思議はないのだが、あの資生堂が歌詞を引用したのは驚いた。しかし、中身はいたって真っ当で、

「20~30代の新規愛用者の取扱い店舗への来店が増えると同時に、取扱いECサイトへのアクセスが集中し、一時的に在庫が完売してしまう状況も発生しました(現在は販売を再開)」

といった説明が書かれている。

   キャッチーなタイトルと、企業イメージのギャップ、そして「香水のせい」と責任転嫁されているのに、それを逆手にとったリリースを打つ「懐の深さ」。ちょうどいいバランスで、魅力が引き立っている好例だ。

(J-CASTニュース副編集長 城戸譲)

【J-CASTネットメディア時評】
いまインターネットでは、なにが起きているのか。直近の出来事や、話題になった記事を、ネットメディアの「中の人」が論評します。

城戸譲 J-CASTニュース副編集長
1988年、東京生まれ。大学でジャーナリズムを学び、2013年ジェイ・キャスト新卒入社。Jタウンネット編集長などを経て、18年10月より現職。「ニュースをもっと身近に」をモットーに、政治経済からエンタメ、生活情報、炎上ネタまで、真面目とオモシロの両面で日々アンテナを張っている。ラジオとインターネットが大好き。(Twitter:@zurukid

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