ネリの体重超過は試合放棄に等しい愚行
このような世界王者による体重超過のなかでも悪質とみられるのがルイス・ネリ(メキシコ)だろう。2018年3月に行われたWBC世界バンタム級タイトル戦の前日計量で約2.3キロオーバー。再計量まで2時間の猶予が与えられたが、結局リミットを約1.3キロ超過して王座をはく奪された。世界戦の計量で2キロ以上オーバーするのは試合放棄に等しい愚行で、ネリに敗れた山中慎介(帝拳)の無念は計り知れない。
ボクシング界で体重超過がなくならないのは、失態を犯した選手に対する処分の甘さがひとつの要因として挙げられる。ネリの例でいえば、統括団体のWBCは当初、無期限の資格停止処分を発表したが、後に6カ月間の資格停止処分に変更された。ボクサーによっては試合間隔を半年ほど開ける者もおり、ネリに対するWBCの処分は甘いと言わざるを得ないだろう。
また、体重超過をファイトマネーで調整しようとするプロモーターの存在も選手の甘えにつながっている。海外でよくみられるのは、一方の選手が体重を超過した場合、プロモーターが契約体重に切り替え、対戦相手にファイトマネーの増額を提示して試合を成立させるパターンだ。ノンタイトル戦ならば、体重超過を犯した選手に与えられるペナルティーはせいぜいファイトマネーの減額か口頭での注意くらいで、ライセンス停止処分などの厳罰がほとんどないのが現状だ。
世界王者の体重超過は決してあってはならないことだが、今回ベナビデスが減量に失敗した経緯には新型コロナウイルスの影響があったようだ。ベナビデスいわく、これまで減量するために利用していた施設の使用が出来なくなり、減量に苦しんだという。約1.3キロ超過したばかりに王座を失ったベナビデス。2018年には薬物検査でコカインの陽性反応が出て王座をはく奪されており、これに続いての王座はく奪となった。