米国ウィスコンシン州で黒人男性のジェイコブ・ブレークさんが白人警官に銃撃された事件で人種差別問題に焦点が当たる中、フジテレビの三田友梨佳アナウンサーが2020年8月27日放送の「Live News α」(フジテレビ系)で述べた言葉に、多くのインターネットユーザーが反応した。
米国では数百人規模の抗議デモが起こり、スポーツ界でもNBAやMLBの試合が延期されるなど混乱が広がっている。テニスの大坂なおみ選手が27日(日本時間)、準決勝に進出したウェスタン&サザンオープン棄権を表明(放送後の28日に棄権の撤回を表明)したことで、事件はさらなる注目を集めた。
「反射的に人種差別へ結びつけるのではなく」
大坂選手の棄権表明について、三田アナが「覚悟や決意があったと思います」と述べると、番組に出演した萱野稔人・津田塾大学教授(政治哲学)は「棄権は日本人に理解を求めたいということに加え、人種差別に関する問題意識を共有してもらいたいという考えもあったと思います」などと推察。このように人種差別問題を論じ、三田アナも「私たちもしっかりと向き合わなければならないと思います」と述べたが、それからこんな言葉を続けた。
「差別は絶対にあってはならないことで、それは全ての人種に対して言えることです。ですが、こうした事件があった時に、反射的に人種差別へ結びつけるのではなく、黒人男性が車にナイフを所持していたとの話もあります。また米国の銃社会という背景にも目を向けて、事実関係は冷静に考える必要もあるように思います」
事件を通して世界的に差別の議論が熱を帯びる中、「反射的に人種差別へ結びつけるのではなく...」などとしたこの発言は、ツイッター上でクローズアップされ紛糾。賛否が分かれた。
「三田友梨佳さんが述べたこと一字一句その通りだと思います。素晴らしい」
「人種差別がどうこう言う前に、報道機関はこういう中立的で当たり前の事を伝えるべき」
「言いたいこと言ってくれた、胸がすっとする」
「これは殆ど白人至上主義者側に立ったコメントでは」
「すげえな三田友梨佳。自覚あるのかね。自分のこういう発言が差別を助長するって」
「これ見ていたんだけれども、とても違和感があった。6発も背後から撃つのはさすがに過剰防衛だろうし、その後のデモで二人を射殺した白人の方は何もされずに(しかも銃を持ったままで)拘束されるってさすがに理不尽すぎじゃないですか?」
車からナイフが見つかる
番組ではこの三田アナの発言の前、銃撃事件当時の状況をVTRで説明。地元当局がテーザー銃(スタンガンの一種)を使って拘束しようとしたが失敗していたと発表したことを報道した。また、撃たれたブレークさんが乗っていた車の運転席側の床からナイフが見つかり、ブレークさん本人もナイフを所持していたと認めているとした。
萱野氏は番組で、「差別を告白する側からすると、黒人は失業率が高い、貧困率が高く、これは差別の結果という認識になる。一方、失業率や貧困率が高いのは、たまたま才能に応じて採用された結果にすぎなくて、差別はないと考える人もいる」と述べ、こうした認識の違いが差別問題を根深くしていると論じた。
そのうえで銃撃事件について萱野氏は「差別を告白する側からすれば、一定の人種の人々は日ごろから職務質問されやすく、いつも色眼鏡で見られ、その延長にこの銃撃事件があったと。だから構造的に差別があるという意識。一方、警察の静止を振り切って車に乗ろうとした、車で暴走するかもしれない、車の中に武器が隠されているかもしれない、だから銃撃事件が起こったと。これは差別と関係ないと考える人もいる。この溝があるから差別を告白する人々の怒りもなかなか収まらないという現状がある」との見方を示していた。