国の観光支援策「Go Toトラベル」で息を吹き返すはずだった旅行業界。しかし、新型コロナウイルスの「第2波」で旅行需要は依然低迷し、中小規模の旅行会社を中心に苦境は今も続く。
2020年8月中旬、東京都渋谷区の繁華街から少し離れた雑居ビルにある旅行会社の事務所は明かりが消え、無人だった。事務所の留守電にメッセージを残すと、2日後に50代の社長から電話が入り、苦しい実情を打ち明けた。
中小は団体旅行や修学旅行に依存「お先真っ暗」と悲鳴も
「私どもは企業の社員旅行や学校の修学旅行が売り上げの大半を占めていますが、コロナでどの(顧客)企業も旅行はもちろん出張も中止、学校の修学旅行は延期続きでいつ実現するかわかりません。少人数の旅行も東京が『Go To』の対象外になったので引き合いはありません。『お先真っ暗』としか言いようがありませんよ」
この旅行会社はコロナ禍で4月から6月中旬まで休業を余儀なくされた。売り上げはゼロでも、事務所の家賃や従業員の給与など固定経費が月300万はかかる。経費削減のため、業務再開後も、必要最低限以外の従業員は休ませているという。「いずれ雇用調整助成金が途切れたら、従業員はかなり減らさざるを得ないでしょう」(社長)
東京都杉並区の「飛鳥旅行」も社員旅行などの団体旅行に頼る。8月は本来、夏休みに多い大学のサークルのグループ旅行、9月は上半期決算前に多い企業の慰安旅行、そして秋の紅葉シーズンの団体旅行などの手配で、繁忙期のはず。だがこの夏は予約が入らず、ビル1階にある実店舗にも客が来ることがほとんどないという。村山吉三郎社長は話す。
「7月以降のコロナの拡大で、企業・団体は旅行を敬遠しているのでしょう。このままではほとんど売り上げは見込めません。『Go To』にも期待をかけていたのですが、若者や高齢者の団体旅行、そして東京都民が対象外になり、大きな痛手です。まさに『指をくわえて見ているしかない』状況です。我々のような中小規模の旅行会社はどこも売り上げが立たず、非常に厳しい状況です」
全国旅行業協会の東京都支部長も務める村山さんによると、全国に約1万事業者ある旅行会社の大半は中小規模で、同様に団体旅行を取り扱うところが多く、「Go To」開始後も苦戦しているところが多いという。