安倍晋三首相が予定している記者会見について、神戸女学院大学名誉教授で思想家の内田樹氏が、新聞2社から予定稿依頼を受けたときに聞いたとする話をツイッターで暴露し、物議を醸している。
予定稿の内容に関心が集まる一方で、仕事上の情報を漏らすのは軽率ではないかとの声も出ている。
28日の会見で何を話すかは、まだ不明
「新聞社二社から相次いで『安倍政権の総括』原稿を頼まれました」
内田樹氏は2020年8月26日、ツイッターでこう切り出した。
安倍首相は、28日の会見で、新型コロナウイルス対策の説明のほか、自らの健康状態についても触れると報じられている。その中で、体力の限界だとして、辞任を表明するのではないかとの見方も一部で出ているのは確かだ。
ところが、内田氏は、かなり踏み込んで、「28日に辞意表明の確率が高いということでの予定稿です」と仕事情報の一部を開示した。そして、「村上春樹ノーベル文学賞受賞の予定稿は毎年書いてますけれど、安倍総理辞任の予定稿ははじめてです」とも明かした。
この投稿は、大きな話題になり、27日夕現在で1万件近くもリツイートされている。
ネット上で影響力のある内田氏が安倍辞任の予定稿を書いたということから、「内田先生の評論...すごく興味あります!」と関心が集まった。また、内田氏は、安倍政権に批判的なツイートを繰り返しており、その意見に共鳴する人たちからは、「この予測が当たって、辞意表明してほしい」「お蔵入りになりませんように」といった願望の声も相次いだ。
しかし、内田氏が仕事上の情報を漏らしたことについて、政治学者らからその影響について様々な意見が寄せられており、疑問を呈する向きも多い。
「あくまで両面みての原稿依頼ではないか?」との指摘も
ツイッター上では、「最低限の仁義は必要と思うが」「実際そうであってもそうでなくとも、軽々しく話すことではない」「辞任しますと言ってほしいなあ という個人的な希望でしょう」などと書き込まれている。
一方で、新聞2社が本当に「辞意表明の確率が高い」と内田氏に伝えたかについて疑問もあった。「あくまで両面みての原稿依頼ではないか?」「原稿を依頼したメディアも、大っぴらにリークされちゃうと原稿使いづらくなるのでは? 結局ボツにされるのでは?」との意見が出ていた。
内田氏は、こうした異論には反応せず、予定稿の内容について一部を紹介するに留めた。
「安倍政権の『功罪』について。『権力者はどんな無法非道をしても処罰されない』という歪んだモラルを深く内面化した人たちが『リアリスト』を自称するようになって、あちこちで偉そうにしているというのが『罪』の最たるものかな」
「それから事大主義の蔓延。『勝った者は正しかったから勝ったのだ。多数派を制した者は真理を語ったから多数の票を得たのだ』という頭の悪い推論を政治家もジャーナリストも平気でするようになりました」
内田氏は、ネット上の疑問についてどう考えるのか、J-CASTニュースでは8月27日に取材を申し込んだ。内田氏は、対談の仕事などで忙しいらしく、同日19時現在では、取材依頼への連絡は来ていない。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)