国の扱いが業界を「アングラ」にしかねない
弁護団は、特定の事業者を交付対象から除外することは「職業差別」なのではないかと考えている。今回の訴訟では、平等原則違反(不合理な差別か合理的な区別か)、裁量権の逸脱濫用があるかどうかが争点となると予想する。
弁護団の一人である亀石倫子弁護士は、「新型コロナの影響を国民全体が受けているなか『この業種だけは助けない』と国が決めることは、命の選別だとも言えます」と述べ、性風俗事業者のみを除外することへの法的な問題点について、こう指摘する。
「持続化給付金も、家賃支援給付金も、国(中小企業庁長官)と私人(事業を営む会社等)との契約(贈与契約)に基づき給付金を交付するものです。法的には『契約』の一種ですが、行政目的を達成するために国と私人との間で締結される契約(これを「行政契約」といいます。)は、私人同士の普通の契約とは違い、公益目的の契約で、原資が税金ですから、不平等・不公正な契約内容であってはならないという法的な制約があります。
以上のことから、中小企業庁は、持続化給付金や家賃支援給付金の交付に当たって、平等原則(憲法14条1項)に違反したり、行政裁量を逸脱・濫用することは許されません。このような違憲・違法がある場合には、国が特定の事業者には給付金を交付しないと事前に一方的に決めたとしても、裁判で国が負ければ、その事業者にも給付金を交付しなければならないことになり、さらに、弁護士費用や慰謝料も支払う必要があります」
国はこれまでに、性風俗事業者に交付しないと決めた根拠・理由をこれまでほとんど示さなかった。国会で除外の理由として主に説明されるのは、国民の理解を得られにくい、これまでの踏襲といったものであった。弁護団はこれに対し、あいまいで合理的根拠が乏しい理由であるとの見方を示した。
法令(売春防止法、風営法)違反の事情以外の事情を考慮・重視することになれば、FU-KENさんの店のように、法令に違反せずに事業を営んできた風俗事業者の取り組みを、ルールを定めた国自身が無視するだけではなく、風俗事業者への「スティグマ」(差別や偏見)を助長することにもなるという危惧を抱いている。
「国が特定の業種をそのように扱うことは、人々の差別意識を助長します。業界内の人間も『どうせ自分たちは裏稼業だから』と思ってしまいます。そういう気持ちから、業界はアングラな方向に向かってしまうのだと思います。性風俗産業に存在する課題は、国からの扱いによるものも大きいと感じています」(FU-KENさん)