割引額大きい高額な宿に人気集中か 苦戦する県は
島根県出雲市の「ホテルながた」もキャンペーンへの参加を見送った。情報が伝わらなかったことや手続きの煩雑さに加え、そもそも利用者の需要が見込めなかったためだという。
「私どものホテルは1泊5500円からで、35%割引したとして3575円になります。どうせキャンペーンで旅行するなら、もっと割引額が多い宿に泊まりますよね」(担当者)
事実、「Go To」で割引額が大きい宿泊施設に需要が集中する傾向があるようだ。
旅行検索サービス会社の「atta」が分析した、オンライン予約可能な全国の宿泊施設の価格動向(8月15日チェックイン分)。1泊5万円以上の宿泊プランの料金(黄線)はチェックイン日が近づくにつれて高騰する傾向が見られた(atta提供)
旅行検索サービス会社の「atta」(東京都荒川区)は7月22日から8月23日までの1カ月間についてオンライン予約可能な全国3万2541宿泊施設を分析。1泊5万円以上の宿泊プランの料金はチェックイン日が近づくにつれて高騰する傾向が見られた一方、3万円未満の宿泊プランは料金を下げていた。高いプランほど需要が高い一方、安価なプランはチェックイン日が近づいても予約が埋まらず料金を下げざるを得ない傾向があるという。こうした傾向は「Go To」が始まる前は見られなかったという。
また、関東から近い避暑地である長野県は8月に入ってから好調な一方、京都府や山口県、大分県、神奈川県、奈良県は苦戦している傾向が出た。全体的には「Go To」による宿泊需要は夏休み期間にもかかわらず、「Go To」開始前と比べて上がっていないという。
都道府県ごとのオンライン予約が可能な宿泊施設の価格動向(8月15日チェックイン分)。長野など東京からほど近い県や、鹿児島など遠隔地でチェックイン日が近づくにつれて高騰する傾向が見られた一方、京都などで苦戦傾向がうかがえる(atta提供)
今回、J-CASTニュースが取材した宿泊業者のほぼ全てが、コロナ禍で消失した観光需要を掘り起こす「Go To」の事業の趣旨に賛同している。ただ、その制度設計の「ずさんさ」や「官製特需」を享受できる事業者の偏りへの不満は根強い。特に存亡の危機に立たされている中小規模の宿泊業者の失望感は大きい。
先出の京都の旅館経営者の北原さんは訴える。
「多くの宿泊事業者の『限界』が近づいていると感じます。旅行に行っても大丈夫という雰囲気をつくっていただきたいです。そして、東京都民の方も『Go To』の対象に戻すなど、当初の目的に沿った仕組みにしていただけると、状況が好転するのではないでしょうか」
赤羽一嘉・国土交通相は2020年8月25日の記者会見で、「Go Toトラベル」の利用者が7月27日から8月20日にのべ420万人に上ったとの速報値を公表した。お盆期間中は新幹線や航空機を利用した遠距離の移動を伴う旅行より、マイカーなどを使った近場への旅行が中心だったと分析している。