伸びぬ宿泊事業者の登録 「手続き煩雑」、東京除外は「フラットでない」
そもそも、「Go Toトラベル」の割引が受けられるホテルや旅館がまだ半数しか登録されていない実情がある。
8月25日現在で、登録した宿泊事業者は約1万7300事業者で、全国約3万5000事業者のほぼ半数(観光庁調べ)。全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)によると登録は大手のホテルや旅館が中心の一方、中小規模の旅館などの登録が伸びていないという。
仙台市の秋保温泉にある旅館はキャンペーンへの参加をめざしていたが、最終的に見送った。理由の1つが、予約を利用者から直接受ける場合に必要な手続きの煩雑さだ。
この旅館はリピーターが多く、主に旅館のウェブサイトやSNSのアカウントで直接予約を受けている。だが、「Go To」事業では直接予約の場合、割引額の不正受給を防ぐため、国の承認を得て宿泊記録を証明する「第三者機関」に宿泊施設が宿泊データを渡してチェックを受ける必要がある。割引額の申請は宿泊施設側が自力で行うか、第三者機関に依頼する必要がある。
「とにかく手続きが煩雑過ぎるのです。やり方を確認しようと、Go Toトラベル事務局や観光庁に電話しても全然つながらず、しかも必要書類が次々追加されて...。うちは東京からのお客さんも多いのに突然『東京除外』になりましたし、キャンセル料の取り扱いも二転三転。うちの旅館は従業員数が少なく、そんな朝令暮改にはとても対応できません。だから、お客さまにかえってご迷惑をかけてしまいかねないと判断しました」
キャンペーンは政府が4月に打ち出し、8月中旬から開始するとされていた。それが7月になって突如前倒しが決まり、7月10日になって開始が7月22日からと発表された。参加する宿泊事業者や旅行業者の登録は開始前日の7月21日に始まるという混乱ぶりだった。
同様にキャンペーン不参加を選んだ宿泊施設の中には他の理由もある。三重県伊勢市の「宿屋 伊勢ピット」は、「Go To」への参加業者に義務づけられている利用客への検温で37.5度以上あった場合の対応が難しいことを挙げた。そもそも旅館業法では、発熱など健康上の理由で宿泊を拒むことを禁じており、「Go To」の要件とは矛盾する。「高熱だからコロナとは限らないし、病院の紹介や保健所への届け出など、いなかでは対応が難しいのです」と店主の長田圭介さんは言う。
また長田さんは、コロナ禍前は東京からの利用者の3分の1を占めていたにも関わらず、「東京除外」となったことに疑問を感じ、キャンペーンへの不参加を決めたという。
「キャンペーンでの割引の原資は東京都民の方が納めた税金も含まれています。私どもの宿にとっても一番お世話になっていた都民の方が除外された、『フラットではない状態』のキャンペーンに参加するのは、申し訳ないという思いから、よく考えた上で不参加を決めました」(長田さん)