国の観光支援策「Go Toトラベル」は開始当初の迷走が尾を引き、夏の行楽シーズンにも関わらず、宿泊施設の混乱・低迷が続いている。旅行需要の掘り起こしには十分だったのか。開始から1カ月が経った観光地の現場で何が起こっているのか、取材した。
「本当に厳しいです。7月(22日から)の4連休以降の予約はほぼ全て『Go To』を使うお客さんですが、それでも例年の(同じ時期の)10分の1くらいしか入りません」
都市部の観光地、客は敬遠? 「客は1日1組あるかないか」
京都市の中心部で「旅館こうろ」を営む北原達馬社長はJ-CASTニュースの取材にそう打ち明ける。30室ある宿は月最大930件の予約を受けられるが、「Go To」キャンペーンが始まった2020年7月22日から1カ月の予約数はそのわずか7%の70件。特にお盆の後は連日宿泊客が「1組あるかないかという状態」(北原さん)だという。
「Go To」の開始前、「新型コロナウイルスを観光地に拡散させるな」などと反対論が吹き荒れる中、北原さんが発したツイートは大きな反響があった。
「Go to キャンペーン、反対の方がたくさんいらっしゃるのは存じていますが、賛成の方もまたいらっしゃいます。事実予約は入って来ています。何故いまなのか?と言う疑問もあるかと思いますが、もう今でないと間に合わないと言う境遇もまたあるのです。観光業にとってはようやく見えた光です」
実際、北原さんはキャンペーンに期待していた。新型コロナウイルスの感染拡大で4月以降は休業を余儀なくされたが、5月末に緊急事態宣言が解除され、その後都道府県をまたぐ移動の自粛が緩和された6月からは徐々に宿泊客が増え始めた。「Go To」で喚起される夏休みシーズンの行楽需要を受け止めるため、キャンペーンへの参加登録も済ませた。しかし、東京など大都市圏でのコロナ感染「第2波」で客足は伸びず、結果的に出鼻をくじかれた。
北原さんによると、京都市内の宿泊施設はどこも同様に厳しい一方で、京都府北部の名勝・天橋立や日本海側の海水浴場、滋賀県内のキャンプ場などは賑わっているという。「旅行者は、『町中はコロナの感染が心配だけど、屋外・いなかは大丈夫だろう』という心理なのでは」と推測する。
9月は修学旅行で京都を訪れる学校からの予約が一時集まったが、コロナ「第2波」で3分の2がキャンセルに。旅館こうろは赤字の状態が続くため、借金をしてしのいでいるが、桜の季節とともに1年で最も行楽客が多い秋の紅葉のシーズンまでこの状態が続くようであれば、再度借り入れが必要と見込む。