「内ゲバ」が発生するのであれば「全額国庫に返したほうがいい」と玉木雄一郎代表が発言して波紋を広げていた国民民主党の資金について、これまでの「50億円」という前提が崩れそうだ。玉木氏は2020年8月26日の定例会見で、党が持っている資金について「40億円台半ばだったと記憶している」と発言。8月12日夜に放送された「プライムニュース」(BSフジ)では、党の資金は50億円程度あることを明かしており、事実上軌道修正した形だ。
さらに、この「40億円台半ば」から、職員の退職金支払いや次期衆院選に向けて活動する総支部長、全国の地方議員に対して金銭的な支援を行い、それでも残った資金が分割の対象になるとの見方を示した。分配の対象になる額は、「50億円」よりも大幅に少なくなる見通しだ。
「今現在は50億円はないことは確実」
国民は8月19日の両院議員総会で、解党と立憲民主党に合流する新党の結成を決めた。この直後に開かれた記者会見で出た質問が「内ゲバ」発言の発端だ。
記者の
「(合流新党に参加しない)少数派でも大半の党資金を引き継ぐということはあり得るのか」
という質問に、玉木氏は次のように応じている。
「そこは常識的な範囲で決まっていくことだと思っているので...。何か、お金をめぐって内ゲバするようなことがあれば、そんなのは国民から見放されますよ! そんなことするんだったら全額国庫に返したほうがいい」
この発言を、合流新党に参加する議員へのけん制だと受け止める向きもあり、波紋が広がった。8月26の会見では、玉木氏は
「(合流新党に参加しない議員が)大半のお金を引き継ぐことはあり得ない」
と述べる一方で、いまある金額については
「詳細は把握していないが、今現在は50億円はないことは確実。色々使って...。あんまり覚えていないが、40億円台半ばだったと記憶している」
とした。さらに、資金の分配は、退職金などを支払った上で行われるとの見通しを示した。
「手当てをきちんとした上で、なお残余の資金を円滑に、友好的かつ円満に分割」
「いったん党を解党するので、職員の皆さんには、一度退職金を払わなければならないと思う。これは積み立てているお金をあてるので、義務的な支払いとして、ちゃんと支払わないといけない。地方にもきちんと手当をする。あるいは、総支部長さんとして次の衆院選に向けて頑張っている方々に対する継続的な支援、こういったことにも責任を持たなければならない。そういった手当てをきちんとした上で、なお残余の資金を、政党助成法等に基づいて、円滑に、友好的かつ円満に分割できれば私は問題ないと思う」
参考になりそうなのが、17年10月の衆院選での資金の流れだ。国民は旧民進党の財産を引き継いでいるが、その民進党は17年9月の両院議員総会で、衆院選に公認候補を擁立しないことを決めている。民進の公認が内定していた人は結果的に希望の党や立憲から衆院選に出馬したが、民進は前職に2000万円、元職や新人に1500万円を支給したという経緯がある。
国民は8月26日時点で、48人に対して次期衆院選に向けた公認の内定を出している。仮に民進党と同様の対応を行うとして、1人1500万円だとすれば、「40億円台半ば」から、少なくとも衆院の予定候補者だけで7億2000万円減ることになる。
その上で玉木氏は、「国庫返納」発言の意図を改めて説明した。
「何かお金でもめるようなことがあるのであれば、いっそ国庫に返したらいいのではないかと申し上げただけであって、そういった職員さんに対する退職金の支払いとか、そういったことは遺漏なきように責任を持ってしっかりやっていきたい」
なお、古川元久代表代行は8月26日、合流新党に参加しない議員による新党を設立するための分党協議を早期に開くように執行部に申し入れたことを明らかにしている。申し入れには党所属国会議員5人以上の署名が添えられており、国会議員5人以上という政党要件を満たすことになる。
(J-CASTニュース 工藤博司)