2020年8月25日のプロ野球・ヤクルト対巨人戦をきっかけに、インターネット上で「場外戦」が勃発している。
巨人が「暗黙の了解」を破ったとヤクルトOBが指摘し、「刺激を与えない方がよい」と警告したところ、野球ファンが反発する事態となった。
「鬼の形相で戦ってきますよ」
「野球界の暗黙のルールじゃないけどあるんですよ」「こういう空気の時にはっていう風に教育しないといけない」。試合を中継したCS放送チャンネル「フジテレビONE」で解説を務めた元ヤクルト・笘篠(とましの)賢治氏(53)が巨人のプレーにあきれ果てた。
場面は8回表、1死1、2塁で巨人の攻撃。8対2とリードする巨人が積極果敢にダブルスチール(重盗)をしかけ、見事に成功した。捕手は投げる構えをするのが精いっぱいだった。打者は空振りしたため、ヒットエンドランの可能性もある。
笘篠氏は、このプレーを「マナー違反」とした。
「この展開で重盗は、暗黙の了解じゃないけど、正直、ベンチから罵声が出た感じがしましたけどね。盗塁の記録はつかないと思いますし、そういうのは野球界の暗黙のルールじゃないけどあるんですよ。(守備側は走者を)フリーにしてるわけですから」
と野球界の"不文律"に触れ、
「逆に言うと、ジャイアンツはそうしたところでスワローズに刺激を与えない方がよいですよ。スワローズファンもそうですし選手たちは明日以降のゲームで、鬼の形相で戦ってきますよ」
と苦言を呈した。
試合は結局、8対4で巨人が勝利した。9回裏にヤクルトが2点を返す猛攻を見せ、守護神のデラロサ投手を引っ張り出した。
「ヒットも打たずに適当に試合進めればいいの?」
メジャーでは、笘篠氏が指摘するような「暗黙のルール」は数多くある。大量リードの終盤でのバントや盗塁は「マナー違反」とされ、報復死球の対象になることもある。
日本ではメジャーほど厳格ではないが、笘篠氏は終盤6点差での盗塁はタブーに映ったようだ。得心がいかず、中継では選手自ら判断した可能性にも触れ、
「ジャイアンツのベンチもびっくりしているかもしれませんよ。こういう空気の時にはっていう風に教育しないといけない。空気を読むっていうのがある」
とコーチ陣に不文律の徹底を促した。
なお、日本では08年にメジャー同様、点差が大きく開いた場面での盗塁は記録として認めないとルール化した。点差の判断は公式記録員が行う。公認野球規則には「走者が盗塁を企てた場合、これに対して守備側チームがなんらの守備行為を示さず、無関心であるときは、その走者には盗塁を記録しないで、野手選択による進塁と記録する」との項目もある。巨人のダブルスチールをしかけた両選手には、盗塁が記録されている。
笘篠氏の発言をめぐっては、ツイッター上で大荒れとなり、
「6点差でも全然油断出来ないと思うけど」
「10点差ならまだ分かるけど、6点差で暗黙のルールとか言われてもね」
「野球界の暗黙のルール大嫌い」
「相手を刺激するなとかどうしたらいいの?ヒットも打たずに適当に試合進めればいいの? 重盗されるバッテリーのミスでしょうに」
「ジャイアンツは手加減しろってことになるしヤクルトファンに失礼だろ」
と反発が広がっている。
巨人・原辰徳は意図的に旧態依然とした慣習を打ち破っているのでは、との見方もあった。8月7日阪神戦の大量ビハインドの場面で増田大輝野手をピッチャーに起用した際は、一部の球界OBから「相手のチームはどう思うだろうか。馬鹿にされてるとは思わないだろうか」などと猛バッシングを受けたが、ファンの多くは称賛を送っていた。