「降格」「大観衆」というプレッシャー
まず挙げられるのは今季の特例。新型コロナウイルス感染症の影響で、今季はJ1からJ2、J2からJ3への「降格なし」となったことに加え、リーグ再開当初は「無観客試合」や観客数5000人を上限とした「制限付き試合」での開催となった。さらに、通常週1試合のリーグ戦が週2試合のことも多くなる過密日程が組まれ、例年以上に各クラブは選手のやりくりに気を配る。山野陽嗣氏はその影響をこう話す。
「複数の若手GKが出場チャンスを得るという過去にない稀有な状況が起きているのは、やはりコロナの影響で『降格がない』恩恵はあると思います。その証拠に、コロナで中断する前に行われた2月の第1節で、大迫選手以外は先発出場の機会を得ていません。もし1節から先発していたのなら『純粋に実力のみで勝ち取った』と言えますが、そうではありませんでした。なので今季デビューした若手GKたちは、大迫選手とはまた状況が異なると思います」(山野氏)
2月の開幕時点では当然、「今季は降格なし」と決まっていない。開幕節での大迫を除く東京世代以下のGKは、柏レイソルの滝本晴彦(23、190/83)が先発したキムスンギュ(29、187/84)との負傷交代という形で、後半途中から急きょ出番を得たのみ。その直後に突入した中断中に前出のルールを整備し、リーグ戦が再開した2節から冒頭の梅田や小畑らが一気に先発するようになった。正GKの負傷離脱などでチャンスがめぐってきたケースもある。だが、若手が出場しやすい状況になったのも確かだと山野氏は言う。
「『降格がある』というプレッシャーの中でプレーするのは容易ではありません。監督やGKコーチも、降格があれば、1人しか出場できないGKになかなか若手を起用できないでしょう。技術もフィジカルも判断力も、ベテランや中堅GKには及ばない面があります。
さらに『無観客』や『観客が少ない』試合でデビューできたことも大きいです。大観衆のプレッシャーがない、あるいは薄い状況で、練習試合のような雰囲気でスタートできた事が、今の若手GKたちの活躍に繋がっている部分はあると思います」