サッカーJ1リーグで今季、東京五輪世代やさらに下の世代の「若手GK」が続々と台頭している。直近の第12節は23歳以下のGKが18チーム中4チームで、さらに第9~11節はいずれも同5チームでスタメンを飾った。ポジションの特性を考えれば異例といえる。
新型コロナウイルスの影響で、今季のJリーグは「降格なし」かつ「過密日程」など例年と異なるルールが敷かれた。「それが若手の出場機会増につながっているのは間違いないでしょう」と語るのは、浦和学院高校サッカー部GKコーチで元U-20ホンジュラス代表GKコーチの山野陽嗣氏。だが、若手の台頭を支えているのは「決してそれだけではありません」という。日本のGK界で何が起きているのか。山野氏の分析を前後編でお送りする。
東京世代だけでなくパリ五輪世代の選手も
若手GKの群雄割拠だ。2020年8月22~23日のJ1リーグ第12節は、東京五輪世代の筆頭株、サンフレッチェ広島の大迫敬介(21歳、187センチ/86キロ=以下3つの数値は同じ並び)のほか、清水エスパルスの梅田透吾(20、184/79)、湘南ベルマーレの谷晃生(19、190/84)、鹿島アントラーズの沖悠哉(20、184/82)ら東京五輪世代の若手がスタメンに名を連ねた。
FC東京の波多野豪(22、198/97)は第9節J1デビューから第11節まで3試合連続スタメン。鹿島は第10~11節、東京五輪より若いパリ五輪世代の山田大樹(18、190/72)を先発起用した。ベガルタ仙台の小畑裕馬(18、185/82)もパリ世代ながら7節までの5試合に先発してきた。ここまで7人もの23歳以下のGKがJ1のリーグ戦でスタメン起用されていることになる。
参考までに19年のJ1は、前出の大迫や、東京世代ではないが当時23歳のサガン鳥栖・高丘陽平(24、181/72)ら、ごく限られた若手しかリーグ戦に出場していない。その1シーズン後にこれだけの人数が頭角を表した。
1チーム11人の中で唯一手が使える特殊なポジション。GKは、1人しか出場できない、経験が物を言う、フィールドプレーヤーに比べて選手寿命が長い、などが重なり、若くしてスタメンを掴む選手は少ない。では今、Jリーグで何が起きているのか。