選任賛成率、異例の「57.96%」 物言う株主に悩まされる東芝・車谷社長のかじ取り

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状況次第では経営陣が...

   今回、東芝が追い詰められた背景には、2017年の増資で海外ファンドに増資を引き受けてもらったことから、外資の株式保有比率が最高7割程度まで高まったことがある。そうしたファンドは株主利益優先を求めるから、経営側とせめぎ合いになるのは、珍しいことではない。東芝で焦点になったのが半導体大手「キオクシアホールディングス(HD)」だ。東芝の半導体部門を切り離した「東芝メモリ」が前身で、東芝は2018年6月、米投資ファンドなど日米韓連合に約2兆円で売却し、その後、議決権ベースで約4割を再出資し、持ち分法適用会社にしていた。

   2年前の2兆円のうち、7000億円を株主還元(自社株買い)したが、大株主のファンド側からは1.1兆円の還元要求もあり、その後の経営側とファンドの攻防の伏線になる。そして今回、経営側はキオクシアHD株をすべて手放し、売却益の半分以上を株主還元する方針を6月に表明していた。これが、車谷氏再任の決め手になったというのが、市場関係者らの見立てだ。

   こうした経緯から、「過半数ぎりぎりの信認は、今回対立した2ファンド以外のファンドの判断によっては、経営陣の首をとれることを示した」(市場関係者)と、厳しい先行きを懸念する声がある。

   一方、東芝をめぐる好条件を指摘する声もある。先に指摘した株主還元に加え、東証1部復帰が期待できることだ。4月に申請し、年内にも実現するとみられている。東芝の株価は、新型コロナショックが表面化する前の2019年末から2020年初は4000円近くあり、足元は3000円台半ばとはいえ、2部に降格した2017年当時と比べて1000円ほど高い。「1部復帰で株価指数に採用されれば投資資金が流入し、もう一段の上昇が期待できる」との声が聞こえる。

   さらに、エフィッシモが総会前に東芝株の一部を売り、保有率が15.36%から9.91%に下がった。東芝は、独立性の観点から社外取締役が属する企業の保有率を10%未満にすることを求めており、エフィッシモがこれに応じた形で、東芝にとっては「反対票」が減ることになる。

   もっとも、こうしたファンドとの攻防もさることながら、やはり業績を上げることが経営の王道だ。再建計画「東芝ネクストプラン」の初年度にあたる2020年3月期は、米LNG(液化天然ガス)事業の売却損などで最終赤字になったものの、構造改革の効果が出て営業利益は前期の3.7倍(1304億円)に伸びた。ただ4~6月期は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で営業損益は113億円の赤字に転落した。通期の営業利益1100億円という期初見通しは維持したが、コロナ禍の行方次第で、楽観はできず、モノ言う株主との攻防は続きそうだ。

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