不正会計や米原発子会社の巨額損失による経営危機からの再起を図る東芝が、外資系投資ファンドとの攻防を繰り広げている。
2020年7月31日の定時株主総会は何とか乗り切ったが、車谷暢昭(のぶあき)社長兼最高経営責任者(CEO)の取締役選任賛成は過半数を辛うじて上回るにとどまった。ファンド側も一定の支持を集めたことから、今後も厳しい経営のかじ取りを強いられそうだ。
「薄氷を踏む」低支持率
このファンドは、「エフィッシモ・キャピタル・マネジメント」と「3D オポチュニティー・マスター・ファンド」。いずれもシンガポールに本拠を置く「モノ言う株主(アクティビスト)」で、エフィッシモは旧村上ファンドの流れをくむ。東芝が債務超過を解消するため2017年に実施した増資を引き受け、再建を資金面で支えた。今回の総会では、それぞれ議決権の15.36%、4.2%を保有していたという。
2020年1月に子会社の東芝ITサービスで循環取引(売り上げの水増し)が発覚したことから、企業統治の強化を求めるとして、今回の株主総会に、エフィッシモはファンド創立者の今井陽一郎氏ら3人の取締役選任を、3Dも2人の選任を、それぞれ提案。これに対し東芝は社外取締役10人を含む12人の選任を提案し、株主提案に反対の立場を表明していた。
結果は会社側提案の12人全員が選任された一方、ファンド側の5人は選任されず、経営側の勝利に終わった。だが、「得票率」は経営側にとって薄氷を踏むものだった。
経営側の主要なメンバー、および対するファンド側の5人の数字を見てみよう。(選任に賛成、反対の順、敬称略)
<経営側>
綱川智(会長)89.95%、8.07%
車谷暢昭(社長)57.96%、18.96%
<ファンド側>
アレン・チュー(投資家)31.14%、66.37%
清水雄也(ひびき・パース・アドバイザーズ最高投資責任者)31.14%、66.37%
竹内朗(弁護士)41.95%、54.76%
杉山忠昭(元花王法務担当執行役員)37.68%、59.02%
今井陽一郎(エフィッシモディレクター)43.43%、54.77%
他の経営側の社外取締役も概ね高率の支持を受けており、車谷社長がファンド側の標的にされた格好だ。ちなみに、民間シンクタンクの調査では、東証上場主要500社のうち、2020年1~6月の株主総会で取締役選任議案への賛成率が最も低かった経営トップは、関西電力の森本孝社長の59.6%で、車谷氏への賛成率はこれを下回ったもので、市場関係者の間では「事実上の不信任」との声も聞かれた。