2020年8月15日、公開が延期となっていた『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」III.spring song』がついに上映された。
台湾でも同日上映が行われ、数多くのファンが映画館に押し寄せる事態となったのだが、公開初日に中国のSNSに全編が違法アップロードされたことがわかり、物議を醸している。
相次ぐ中国への違法アップロード
中国は映画上映に厳しい「審査」があり、政府当局の意にそぐわない、または公序良俗に 反すると判断された場合上映自体が不可能となる法律が存在している。その上、審査に膨大な時間がかかるため、自由な台湾のように「日本と同日公開」という上映手段はほぼ不可能だ。
しかし、中国にもアニメ、映画ファンは多く存在しており、こういった続編や新作をいち早く見たいというニーズは強い。そのため、海外にいる中国人ユーザー、またはアカウントを持つ現地ユーザーが違法アップロードを繰り返し、アクセスを稼いでいるのが現状なのだ。
『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」III.spring song』もその一つであり、他にも盗撮被害を受けている新作映画は多い。私たちの価値観からすれば「盗撮、違法アップロードは犯罪」だが、最新映画をある意味自由に見ることの出来ない中国ファンからすると、これは「救済」であるとも語られている。
アニメファン激怒
日本のドラマを好む人々が多く、ドラマ「結婚できない男」(フジテレビ系)や「半沢直樹」(TBS系)などの人気シリーズはこちらとほぼ同時に放映されている台湾。その風習は映画も例外ではなく、庵野秀明監督の「シン・ゴジラ」の海外最速上映、日本人アーティストが開催するコンサートのライブビューイングを行うなど、近年は日本に行かずともエンタテイメントをリアルタイムで楽しむことが出来るようになった。
十数年前は海賊版のDVDなども当たり前に販売されていたが、現在はファンの意識も高まり「公式にお金を落としたい」という意見が広まっている。
その傾向はアニメ業界が最も顕著で、未だ海賊版グッズは存在しているがファンはしっかり公式通販や代行サービスで正規品を手に入れるように努めているようだ。コロナ禍以前は、「限定グッズを買いに日本に来ました」という渡航理由を述べるオタクも多数見受けられた。
そんな中で発表された『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」III.spring song』が同時上映されるニュースには台湾ファンも喜びを爆発させていたのだが、今回なんと台湾で盗撮されたものが中国のSNSに流出、全編が無料で見られる状態になっていたというのだ。
「今後日本との同時上映がなくなったらお前のせいだからな」
違法アップロードを行ったユーザーはすぐさま台湾ネット民に特定され「なんてことをしてくれたんだ」「今後日本との同時上映がなくなったらお前のせいだからな」「やってること犯罪なのわかってるの?」といった批判が殺到した。
ユーザーは今回だけではなく、以前からアニメ「SHIROBAKO」の劇場版や、「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている」のファンアートを無断で転載していた「常習犯」であるとも指摘された。問題のユーザーは、総攻撃を受けた際にアカウント名を変更して「逃亡」している。
この騒動に対し、これまで様々な日本アニメを輸入し、本作の上映も手掛けた「曼迪」は、「映画の盗撮、違法アップロードは犯罪です。軽い気持ちで...友達に見せたくて...といった言い分は、盗撮をしていい理由にはなりません。弊社はそのような行為を絶対に許しませんし、全て刑事事件として扱う予定です」と強めの言葉で宣言。
「同時上映までこぎつけたのは滅多に無いこと。悪質な行為を見つけた場合は、遠慮なく劇場スタッフへ知らせてください」「この様な事が再度起こった場合、同時上映が二度と出来なくなる可能性が高い。弊社及びファンの皆さんが迷惑を被る違法行為は辞めて頂きたい」といった見解を述べている。
(フリーライター 室園亜子)