最初の配信動画は「いいね」3つ それでも出し続けた
CLPが始まったのは2016年の参院選前だ。この参院選は、前年9月の安全保障関連法成立後に初めて民意を問う国政選挙となった。廃案をめざす野党が共闘し、1人区で統一候補を立てるなど、有権者にとっての選択肢は、あるにはあった。しかし佐治さんらは近年の選挙で、与党に投じた3〜4割の人の票は政策に反映される一方で、毎回半数の人が投票自体に行かない実態に疑問を抱いていた。
「これからの日本社会を担う人々が、自分たちの人生を決める選択を放棄している。このままじゃいけない」
それなら、まずは「自分たちにできることから始めよう」と、同じ問題意識を持つ報道ディレクターら数人とともに、投票を呼びかける動画をつくり、自分たちでネットに配信することから始めることにした。企画名は「Choose Life (自分で自分の人生を選択する) Project」に決めた。
その1本目は、映画監督の是枝裕和さんにインタビューし、「皆さん、選挙へ行きましょう」などと語りかけてもらう動画だ。元はテレビのドキュメンタリーディレクターでもあった是枝さんには、以前からテレビ報道の現状や悩みについて相談したことがあり、選挙についての佐治さんらの問題意識にも賛同してもらえた。さらに、各メンバーが取材などで縁があった映画監督の故・大林宣彦さんや演出家の平田オリザさんら著名な文化人やミュージシャン8人に、投票を呼びかけてもらう動画のシリーズを次々と制作・配信した。
ただ、再生回数は伸びず、配信先の1つツイッターでは当初、「いいね」が3つしか付かなかった。それでもメンバーたちはこう確認し合った。「とにかくやり続けよう。選挙の度に出し続けよう」
その後も、大きな選挙の度に動画をシリーズで配信したほか、20年2月からは国会審議のポイントを2分台に編集した「国会ウォッチング」を開始。YouTube上での再生回数はそれまでの数百回から数千回単位に増えた。5月から検察庁法改正に関して野党党首らの記者会見や識者やタレントらによる討論会を生配信するシリーズでは、再生回数が毎回数万回単位に。「メディア」としての手応えをつかんだ。