三井住友カードとSBI証券が事業提携 これで「投資」がより身近なものに?

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   金融サービスの「決済」と「投資」のどちらを良く行うかと聞かれれば、十中八九「決済」と答えるだろう。どうしても「投資」は敷居が高いものと見られがち。そのため身近な決済サービスを、投資のきっかけ作りとして活用できないかと考える金融機関が増えている。

   三井住友カードとSBI証券が2020年7月28日に発表した「個人向け資産運用サービスにおける業務提携」もその一つ。この業務提携で提供が始まる新サービスの詳細を知ることで「決済をきっかけとした投資の誘引」がどのようなものかを理解してもらいたい。

「カード×投資信託」は後発だが顧客規模からすると...

   今回三井住友カードとSBI証券が発表した事業提携では、SBI証券での投資信託積立を三井住友カード決済で利用できるようになるなど、両社のサービスを結びつけて展開する4つの新サービスが盛り込まれている。これらのサービスは2021年2月以降、順次展開されるとのこと。

   サービスの軸は三井住友カードを使った決済で貯まる「Vポイント」とSBI証券が提供する「投資信託」の売買サービスに関するもの。プレスリリース文中では「若年層や投資初心者向けの中長期的な資産形成の支援を目的」としているが、今までよりもお得・便利に投資ができるようになるため、利回りやポイント還元率を気にする投資熟練者も誘引できるものとなっている。また「顧客のキャッシュレス化」とあるのは、SBI証券の口座保有者に対するクレジットカードの利用促進を指している。

   ところでポイントサービスと投資信託の売買とを組み合わせたサービス自体には目新しさはない。楽天カードや楽天証券を筆頭に既存の金融機関が提供しているので(下図)、三井住友カードとSBI証券によるサービスは後発になる。

引用元:楽天証券
引用元:楽天証券

   しかしカード会員数約4754万人を抱える大手カード会社と、先進的にオンライン証券サービスの発展に取り組むSBI証券との協働は、特にクレジットカードを使った投資信託の積立サービスの利用者を大きく増やせる機会となる。ビジネス面ではいわゆる「楽天経済圏」に対抗するための一手段として、決済を軸にした金融サービス利用者の囲い込み戦略であるといえる。

   ちなみになぜ金融商品の中でも投資信託に注目されているのかといえば、金融機関が継続的な収益を上げやすいからである。投資信託には保有している残高に応じて「信託報酬」という手数料がかかる仕組みがある。金融機関からすると投資家から残高に応じて利息を貰っている仕組みになるので、できるだけ長く・多く投資信託を保有してもらいたいのである。

4つの新サービスの詳細をチェック

   4つの新サービスがどのようなものか。それぞれ詳しく見てみよう。先にも述べた通りVポイントと投資信託に関するサービスであり、利用には三井住友カードの保有とSBI証券の口座の両方を持っている必要がある。

注:ここで紹介する順番は内容を理解しやすいように、プレスリリース中のサービスの順番とは並びを変えてある。

■4つの新サービス

(1)投資信託のクレジットカード積立
SBI証券での投資信託積立に三井住友カードの決済が利用でき決済金額の0.5%のVポイントが貯まる。Vポイントとは三井住友カードや三井住友銀行の取引によって貯まるポイント。金融商品を購入した際に貯まるポイントはその分だけ金融商品の利回りが高くなる。または手数料が割引になる効果があるので、現金で購入するよりもお得なのは言わずもがな。

(2)投資信託残高によるVポイント付与
顧客がSBI証券で保有している投資信託の残高に応じてVポイントが貰える。具体的にどのくらいのポイントが付与されるかは発表されていない。またすでにSBI証券は「投信マイレージサービス」というTポイントが付与されるサービスを展開しているがそれとの併用はできない。投信マイレージサービスではポイント付与率が、保有残高や投資信託の種類によって異なっている。最大付与率は年0.20%であるので、Vポイント付与率も同じ水準になるだろう。

(3)Vポイント投資:投資信託の買付代金にVポイントを充当
カード決済や銀行取引で貯まるVポイントを投資信託の買付代金に充当できる。Vポイント1ポイント=1円として利用可能。ポイントと現金投資とで別口座の扱いになるのか、ポイントで投資信託を積み立てたらさらにポイントが付与されるのかといった詳細は、プレスリリースでは発表されていない。

(4)三井住友カードアプリ上でSBI証券総合口座情報を表示
三井住友カードが提供している利用代金の詳細などが確認できるアプリ「Vpass」上でSBI証券の情報を表示できる。表示できる情報の詳細は発表されていないが、日常的によく確認するであろうカード決済代金の画面に証券の情報を表示することで利用者の投資を誘引する狙いがあるだろう。

若年層の囲い込みの本気度は如何に?若年層専用商品は三井住友カードにはあるが......

   三井住友カードとSBI証券のそれぞれの商品・サービスやコンテンツに注目してみると、三井住友カードには「三井住友カード デビュープラス」という18歳から25歳向けで、初めてクレジットカードを持つ人向けの商品がある。(下図)

   一方でSBI証券には25歳以下専用証券口座という風に、若年層向けの口座はない。当然投資初心者向けの商品説明は充実しているのだが、若年層がSBI証券を使いたいと思ってくれるのだろうかは疑問が残る。SBI証券には商品ラインナップが多くて魅力的な証券会社なのは間違いないのだが、そのラインナップの多さが、若年層にどう評価されるのかが気になるところ。同じことは楽天証券にも言えるのだが、若年層の獲得と差別化を図るのであれば、若者専用口座を一つの差別化ポイントとしてSBI証券に提案できないものだろうか。

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