新型コロナウイルスの重症者の基準をめぐり、NHK総合テレビの報道番組「ニュース7」が自分の発言について「誤報」を流したと、国立国際医療研究センター病院の大曲貴夫国際感染症センター長がツイッターで抗議している。
基準について、国より都の方が優れているとは言っていないとしている。これに対し、NHKは、「誤解を招く表現」だったことを翌日の番組内で認めた。
「都の基準の方が実態を反映している」と発言内容を紹介したが...
大曲氏が「誤報」を指摘したのは、2020年8月20日放送のニュース7だ。
番組では、コロナ重症者について、都などが、国と異なって集中治療室(ICU)の患者数を含めない基準を採用しているとして、その背景を分析した。
この日に開かれた都の会議で、大曲氏らが感染状況を報告し、モニタリング指標に使う重症者の基準についても解説した。
番組では、重症者の数は、感染状況を判断するうえで重要な指標とされるとして、ナレーションで大曲氏の発言内容をこう紹介した。
「集中治療室の使い方は病院ごとに異なり、都の基準の方が実態を反映している」
続いて、大曲氏が会議で「必ずしもICUに入院した患者さんが重症患者とは限らない」などと発言するシーンを流した。
そして、小池百合子都知事が、「現場の医療施設をですね、最も戦略的に生かせる方法として、東京都としてこのモニタリング指標は大切にしていく」と発言する様子も流された。
これに対し、大曲氏は、20日の放送後、ツイッターにこんな投稿をした。
「都の基準を他と比較した発言ではないと分かった」
「本日NHKニュース7で、私 大曲貴夫が新型コロナウィルス感染症の東京都モニタリング指標について『都の指標の方が優れている』と発言したと報道されました。私はそのような発言はしていません。指標の選択の根拠を述べましたが、国の指標との優劣など一切論じていません」
この投稿は、1万件以上もリツイートされるほどの反響を呼んでいる。
さらに、大曲氏は、「私の人格を傷つける悪質な誤報です。速やかに訂正頂きたい」とも求めた。これらの投稿は、大曲氏のフェイスブックでも行われている。
大曲氏の誤報指摘について、NHKの広報局は8月21日18時半、J-CASTニュースの取材にこう説明した。
「きのうのニュース7の放送では誤解を招く表現があり、 現在対応を検討しております」
その後、同日夕のニュース7では、重症者の基準について、都の考え方を改めて紹介するなどした後、NHKのアナウンサーが、大曲氏の発言内容を紹介した前日の放送に言及した。
大曲氏が「都の基準の方が実態を反映している」と発言したかどうかを改めて確認したところ、大曲氏のは、都の基準を他と比較した発言ではないと分かったと説明した。そのうえで、アナウンサーは、「誤解を招く(ナレーションの)発言でした。失礼しました」と述べた。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)