フェイスブック発の「会話」意識するハフポスト 既存メディアと異なる視点
フェイスブックでも、最も多くシェアされた10本のうち6本を新興ネットメディアの記事が占めた。うち4本はハフポスト日本版の記事だ。
ハフポスト日本版の竹下隆一郎編集長は、フェイスブックを通じた拡散を「うれしい」と話しつつも、シェアされることは意識しながら配信したと明かす。
「(既存メディアでは)戦争体験者、専門家、あるいは記者が戦争を『語り継ぐ』という前提ですが、私たちの場合は戦争体験を語ってくれた人たちとともに、フェイスブックでシェアしてくれたユーザーも結果的に『語り部』になってくれた形です。普通の人が普通の目線で『知ってる?』と話題にしてくれる記事も、実は多く広がるのです」
「私たちは『会話が生まれるコンテンツを出していこう』というコンセプトでやっています。なので戦争についても、意外と知られていない事実をわかりやすく、そして話題にしてもらえるよう奇をてらわず素直に書くことに徹しました」
「例えば、『長崎に原爆が投下された1945年8月9日は、こんな日だった。写真や記録を振り返る』の記事で、原爆の投下目標は当初、長崎ではなく小倉だった事実を書いたところ、『知らなかった』と反響がありました。すると、『もしかしたら私たちの街にも...』と会話が生まれるのです。『"きみたち日本人は腹が立たないのか" チェ・ゲバラは、広島の原爆資料館で憤った』の筆者・安藤健二記者も、『長崎に原爆』の生田綾記者も、『歴史的な出来事として本で書かれたり、かつて報じられたりした話だとしても、多くの読者は知らないという前提で、きちんと伝えたい』と書いたのです」
では、なぜ既存メディアは同じような視点で報じないのか。朝日新聞で記者経験もある竹下氏は、8月ジャーナリズムの「マンネリ感」につながる、既存メディアの報道の現状を3つ挙げた。
「1つ目が『日付中心主義』です。『政府が~日に発表した』というように、その日起きたニュースでないと、記事にならないと考えてしまう。2つ目が『新規性主義』です。これまで報じられていない事実でないと報じる意味がないと考えてしまう。3つ目が『過去の記事の検証不足』。毎年、担当記者が代わる代わるゼロから記事を作ろうとして、過去のどのようなコンテンツがどう読まれたかを検証せずに、取材を始めてしまう。日本の人口の8割が戦争のことを体験していないのです。今の時代を生きる人が自分事と考えられる題材をわかりやすく何度も書き続けることが大切なのではないでしょうか」