ツイッターで上位占めたバズフィード 「拡散」の秘訣は...
一方で、数多くシェアされた記事を見ると、ツイッターでは上位10本のうち、バズフィード・ジャパンの記事が4本を占めるなど新興ネットメディアが配信した記事が目立つ。
NHKの「小泉環境相が靖国参拝」や毎日新聞の「首相、長崎原爆資料館訪れず」など、既存メディアが配信した記事でランクインしたものはいずれも「ストレートニュース」と呼ばれる、20年の終戦の日や長崎原爆の日に起きたニュースを淡々と伝えるタイプの記事だ。
一方で、新興ネットメディアが配信した記事に特徴的なのは、あの時代を生きた人たちの証言をたっぷり盛り込んだスタイルのものや、意外と広く知られていない史実を深掘りしたもの。書き方や題材自体は既存メディアでも見られた記事だ。そもそも「平和」報道自体、数十年も前から既存メディアが得意としてきた取材テーマなのに、新興ネットメディアがあえてその領域に力を入れるのはなぜか。
バズフィード・ジャパンで一連の記事のデスク役を務め、自らも執筆した貫洞欣寛記者と、上位にランクインした「『私の戦争は、あの日で終わらなかった』」戦災孤児が語る、終戦後の"地獄"」、「『おとうちゃん どうして...』子どもたちの残した原爆の詩が、いま問いかけるもの」、「長崎にあった『幻の原爆ドーム』は、なぜ撤去されてしまったのか?」を執筆した籏智広太記者に聞いてみた。
「今年は終戦から75年。ということは、当時25歳で兵士だった人も今は100歳です。彼らの体験を直接聞いて記事にする機会は、そろそろ限界に近づいています。私たちはメディアとしての社会的責任を最も大切にしていますので、戦争体験を次の世代に継承することこそが役割だろうと。それに尽きます」(貫洞記者)
「戦争に関しては意外に今でも知られていない、伝わっていない話がたくさんあります。そんなテーマに着目して書こうと意識しました。例えば戦災孤児の記事は、戦場体験ものが多い報道の中で、取り上げられることが少なく、記事配信後に「知らなかった。火垂るの墓(野坂昭如の短編小説)だけの世界かと思っていた』といった反響が若い人たちからありました」(籏智記者)
ネットメディアならではの工夫や、ツイッターで「拡散」の秘訣はあるのか。
「新聞だと、どうしても紙面の制限がありますが、ネットメディアにはありません。その分、ディテールをたっぷり書き込むようにしています。例えば、戦災孤児の記事は実に8000文字もあります。籏智記者は最初に原稿を出してきた時に『長すぎませんかね』と心配そうでしたが、すっと一気に読めたので、『この分量で行こう』となりました」(貫洞記者)
「戦争報道に限らず、常にSNSで拡散されることは意識しています。SNSでユーザーに響くのはやはり当事者が発した言葉ですので、言葉をツイート文言に入れたり、興味を持たれるように謎かけっぽい文言にしたり。記事自体も、当事者たちの言葉を削らずにそのまま紹介することを心がけました。その言葉の強さが、記事を読んでくれた人に何かを与えられたのかと感じています」(籏智記者)