料理の大変さを共有するには
東京大学教授で、食品CMに関する著作もある瀬地山角氏(ジェンダー論)はJ-CASTニュースの取材に、冷凍餃子、ポテトサラダをめぐる問題の背景には「手作り信仰」があるという。
「奇妙な規範で、料理は手作りでなければならないと思いこんでいる。むしろ買ってきたほうが美味しい場合があるのに、許されないとなる。それを作る側も内在化している。合わせ調味料のような商品は、作ったふりができて罪悪感を減らしてくれる」
「日本の歴史上、専業主婦の比率が一番高かったのは団塊の世代なので、その層は規範を内在化している人が少なくない。その世代を含めて、50、60代以上の男性は料理ができない人が多く、当然準備されているものとの感覚が強い」
"信仰"をなくすためには、どうすれば良いのか。瀬地山氏は「冷凍餃子、ポテトサラダの件も、普段料理をしないからどれだけ手間かわからず、あのような勝手なことを言ってしまう。理解させるには、『じゃあ作ってみて』と言い返したり、『夕食ストライキ』するなどしたりして、彼らを作る側にすることだ。休日のカレーといったレベルではなく、毎日の夕食を回す経験をすれば、おのずと手作りの面倒さが理解できる」と話す。
なお、瀬地山氏は味の素冷凍食品のツイートに苦言を呈している。
「大変な『手間』をお母さんに代わって丁寧に準備させていただいています」などの文言によって、「料理は女性がすべきもの」とのステレオタイプ(固定観念)を強化してしまい、「味の素の『応援』が、同じように母親を追い詰め、父親を免罪している。大企業が堂々と固定的性役割分業を追認したもので、元のツイートが母親からの発信だったから、といった言い訳は通用しない」と指摘した。